衆院選で獲得した戦後最多316議席。それでも始まりそうな自民党「高市おろし」のカウントダウン

 

安倍政権とは比較にならないほど脆弱な高市氏の参謀陣

第2次安倍政権時代も、2012年衆院選で294議席を獲得、14年に290議席、17年には284議席と圧倒的な強さを発揮した。盤石な政権を築き、目立った党内抗争は起きなかった。高市政権はその再現を狙っているが、真の味方となる“参謀陣”に関する限り、安倍政権とは比較にならないほど脆弱だ。

安倍氏が長期政権を築けた理由は、菅義偉官房長官、今井尚哉秘書官といった剛腕の参謀をそろえ、内閣人事局を通じて官僚の人事権を握り、逆らう者を排除する「官邸支配」を構築したからだ。安倍氏は、保守派の理想を追いながらも、実際には派閥のバランスを重視する「リアリスト」でもあった。

高市首相が最も信頼する木原稔官房長官は保守派として高市氏と思想が近く、かつ旧茂木派で培った調整能力を持っているといわれるが、今のところその実力のほどはわからない。「責任ある積極財政」を実務で支えるべき片山さつき財務大臣は、財政健全化を旨とする財務省トップとしてのの立場との“矛盾”がある。高市首相の望む政策を、財務官僚がギリギリ飲める実務レベルに“翻訳”するという極めて高度な調整をしなければならず、下手をすれば「実行力不足」の烙印を押されかねない。

いずれにせよ、高市首相の人事掌握が党内全体を畏怖させるほどには至っていないことは明らかである。だからこそ、大勝の祝賀ムードに包まれた選挙翌日にもかかわらず、岩屋氏から「ブレーキを踏む」と冷や水を浴びせるような発言が飛び出したのだ。

高市首相が高水準の支持率を保っていれば、来秋、間違いなく自民党総裁に再選される。だが、今回の衆院選まで「物価高対策」の陰に押し込めていた安全保障改革、インテリジェンス強化、スパイ防止法制定など「国論を二分する政策」を進めていくとなれば、それは容易なことではない。

また、「積極財政」が想定外のインフレや金利上昇を招き、生活困窮が広がる恐れもある。世論の風向きが変わり、支持率が危険水域に突入すれば、おそらく来年の総裁選を前に「高市おろし」が起きるだろう。

高市首相は自らの信念と勉強量に裏打ちされた強い意志を持つリーダーである。しかしそれは、「自分こそが正解を知っている」という過信につながりやすく、「独断の罠」にはまるリスクも大きい。非主流派の動きを「政権の寿命」を延ばすための外部モニターとして戦略的に活用できるかどうかが、案外、長期政権へのカギになるかもしれない。

この記事の著者・新 恭さんを応援しよう

メルマガ購読で活動を支援する

image by: 首相官邸

新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国家権力&メディア一刀両断 』

【著者】 新恭(あらたきょう) 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 衆院選で獲得した戦後最多316議席。それでも始まりそうな自民党「高市おろし」のカウントダウン
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け