トランプに切り捨てられるという不安妄想。欧州各国が「プーチンと直接話さなくてはならない」と言い出した理由

 

欧州各国が消し去ることのできない「トランプ絡みの不安」

2つ目は「トランプ大統領のアメリカがいつ欧州を切り捨てるか分からない」という消し去ることができない不安の存在です。

同じく会合に参加していた米政権幹部と話すと、「アメリカが欧州を切り捨てるということは考えられないし、それは欧州の勝手な妄想だと言い切りたいが、ただ、欧州各国には肝心な時にもっと頼りになってほしいとは常々思う。これまで“振り返ったら欧州はアメリカの背後にはおらず、いつもはるか遠くから吠えているだけ”ということが多く、非常に失望してきた。欧州はもっと自らの安全保障に対して真剣になるべきだという認識については、私も100%同意する」と言っていました。

“いつ切り捨てられるかわからない”という恐怖心にも似た認識は、トランプ政権の対応が予測不可能であることと、第1次政権時から存在した緊張、アメリカ側から寄せられる対欧州不満(例えば、欧州はアメリカからNATOという形で提供されている安全保障と平和にただ乗りしているというもの)、そしてロシア・ウクライナ問題の解決プロセスからの実質的排除、そして極めつけはグリーンランド問題での対米抑止力の必要性が現実味を帯びてきたことがベースにあるものと考えます。

プーチン大統領との対話再開の必要性という点では、独仏はまだ正反対の意見を持っていますが(特に時期について)、対米警戒心の強さやロシアを脅威とみなす外交・安全保障方針では一致しており、また「ウクライナの問題に必ず欧州が関与し、あらゆる決定に携わらなくてはならない」という基本姿勢でも一致しています。

ただ、いろいろな決まりを米ロ(ウクライナ)間で作り、それの中身の実施(主に支援と軍事的なプレゼンスなどの負担)は欧州各国とその他の国々に丸投げするというトランプ政権の姿勢には一致団結して抵抗し、抗議することで一致しています。

MSCで話した方たちの意見では「今回の独仏の核共有と欧州安全保障部隊のお話しについては、アメリカに欧州の“本気度”を示し、こちらを振り向かせようとする一連の示威行為」との見方が多かったように思います。

そして同様の懸念と理由が、ここは独仏で反対になるのですが、プーチン大統領との接近の可否・成否という話に繋がります。

フランスは、ロシアがウクライナに侵攻する直前まで“ロシアと直接話が出来る特別な関係”をアピールしていましたので、そのチャンネルを復活させ、欧州内でのプレゼンス向上・回復を狙っているものと思われます。

ドイツについては、今の段階でプーチン大統領との対話を再開する動きを見せると、ロシアを勢いづかせるだけで逆効果と慎重な姿勢を崩していませんが、ロシア・ウクライナ戦争が何らかの形で決着した暁には、ロシアとのエネルギー協力を再開させたいという思惑が隠れており、後日の関係修復で後れを取らないためには、そろそろ動き出す必要があるのではないかとの認識が強まってきている証ではないかと考えられます。

そして何よりも【アメリカ・トランプ大統領を振り向かせるために、欧州もロシア・プーチン大統領との対話ができることを示して、欧州を話し合い・決定の場に含めさせるように働きかけたい】という、プライドに似た思惑があるのだと考えます(そして散々アメリカを非難してみても、欧州各国もやはり自国ファーストの政策の追求をしています)。

ただ現実は、今回の話の感触から見ると、この欧州の動きはアメリカからもロシアからも意図が見透かされ、いいように扱われて、相変わらず蚊帳の外に置かれているように思われます。

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