トランプにとっても必要である「プーチンとの対話」
では“ロシアが必要”または“プーチン大統領との対話が必要”なのは、欧州だけでしょうか?
それはトランプ大統領のアメリカも同じだと考えます。
ロシアがロシア・ウクライナ戦争の当事者であり、プーチン大統領の決断無くしては、いくらトランプ大統領が派手に吠えまくっても、戦争を終結させることが不可能であることもあるため、その解決を実現するためにプーチン大統領が必要だというのはクリアだと思いますが、トランプ大統領が“ピースメーカー”として2025年に仲介に乗り出した数々の紛争案件の解決についても、その当事者となっている国々おおよび非政府組織の協力を得るためには、それらの国々・組織に影響力を有するロシアの大きなワンプッシュが必要になります。
例えば、核協議を行っているイランについては、背後に中ロがいることは何度も触れている通りですが、中国が主にイランの経済面での支援を担っているのに対し、ロシアはイランの軍事面を支えており(恐らく双方向で)、今後、イランの核開発が一気に進展するか、それとも止まるか、のカギを握るのが「ロシアからの原子力関連の対イラン支援の有無と規模」だと考えられます。
他にパキスタンや北朝鮮というワイルドカードは存在しますが、ロシアの比ではないとされ、中国は一応、表向きは「能力はあるが、軍事的な支援は行わない」方針があるため、核協議というアリーナでは、あまり重視しなくていいのかもしれません。
とはいえ、中国もイラン核合意の当事国の一つですので、無視すると後で痛い目に遭いかねません。何しろ、バイデン政権時に、アメリカ政府に知られることなく、水面下でサウジアラビア王国とイランの歴史的な和解を仲介して見せ、アメリカ政府の顔に泥を塗ったのは、誰でもない中国なのですから。
イランとその背後にいる中ロに圧力をかけるべく、ネタニエフ首相をワシントンに招いてイラン問題を協議してみたり、ジュネーブでの米・イラン核協議を行いつつ、トランプ大統領が突然「そう遠くないうちにイランへの攻撃を行うかもしれない。その場合には先日の核施設への攻撃以上の結果をもたらすだろう」と口撃してみたりしていますが、中ロも“そのイラン攻撃”が与える国際情勢への破滅的な影響をアメリカも理解しているはずだと踏んで、現時点ではまともに捉えていない模様です。
ここで触れた“破滅的な影響”についてですが、昨年、バンカーバスターを用いたイランの核施設への空爆以降、アラブ諸国のアメリカへの風当たりが強くなっており、最近もイスラエルと結託して再攻撃に踏み切る恐れが持ち上がってくると、サウジアラビア王国を筆頭に「イランへの攻撃を実施する場合には、アメリカおよびイスラエル軍機の領空通過を拒否する」と宣言し、仮に攻撃時に自国領内に被害が及ぶような事態が起こった場合には、迷わずイスラエルに対する報復攻撃を行うと公言していますので、本当にアメリカ(とイスラエル)がイラン攻撃に踏み切った場合、アラブ諸国の反撃に直面することになり、アメリカはアラブを失うことになってしまう可能性が一気に高まります。
そうなると、イスラエルはいきり立つ敵に囲まれ、再度、生存上の危機に直面することになりますが、その際にイスラエルがどのように対応するかによっては、ここが世界戦争の発火点になり得ると考えます。
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