スパイ防止法にチラつく“統一協会”の影。高市早苗政権が目指す「疑われないように黙る」監視社会の絶望

 

首相官邸に権限を集中させてよいか

国家情報局構想は、その構造にも問題がある。 現在の議論では、防衛省、外務省、警察庁、公安調査庁などに分散している情報収集・分析機能を内閣に集約させ、首相官邸の権限を強化する体制が検討されているのだ。 この場合、首相官邸内での活動は、一体誰が監視するのか? そこに国会や司法は影響を及ぼせるのか? 首相とその側近だけで「情報」を見て、利用したり、もみ消したりできるような仕組みになりはしないか? 重大な憲法違反が起きても、それを知る由もないという事態に陥っては困るのだが、その「歯止め」については具体的に伝わってこないまま、高市早苗という”強気の女性リーダー”が、「権限の強化」だけをアピールしているという状態だ。

日本には、「特高警察」という歴史がある。 権力の判断ひとつで、思想や言論が国家秩序を乱すものとして取り締まられ、人々が弾圧された過去だ。 制度が悪用されない保証はない。 「何が外国の影響か」「何を危険と見なすのか」の基準が曖昧なまま、権力にいかようにも判断できるような構造を作るのは危険だ。 国家情報局を創設するなら、同時に、それを厳格に監視する独立した機関も設置しなければならない。

スパイ防止法の危うい系譜

私が「スパイ防止法」という言葉をはじめて聞いたのは、約9年前、森友学園事件の時だった。 「安倍晋三記念小学校」創立の夢を見て、安倍昭恵を名誉校長に迎えて国有地を異様な安値で入手した末に、詐欺罪で実刑判決となった籠池泰典が、動画のなかで声高に主張していたのだ。 それだけで胡散臭さを感じたが、調べてみると、やはりただならぬニオイを発していた。 「スパイ防止法」の議論は、1980年代初頭にさかのぼる。 冷戦下の反共意識が強かった当時、自民党が、防衛や外交に関する機密漏洩を防止する法案を国会に提出した。 違反した場合の最高刑は「死刑」だった。 この法案の推進運動は「スパイ防止法制定促進議員・有識者懇談会」が担っており、その会長は岸信介だった。 さらに、統一協会の政治団体「国際勝共連合」も名を連ね、多額の資金提供を行うなど、強力な後押しを行っていた。 その後も勝共連合は、機関誌などで「スパイ防止法」の制定を主張しつづけ、時代が下って、岸の孫である安倍晋三が首相になると、ますます「制定急げ!」の声を強めた。

だが、この法案には強い反対運動も起きた。 法曹界や学界、市民団体などから、「何を国家機密とするのかが曖昧」「ふつうの情報交換や調査まで処罰対象になる」「後からいくらでも拡大解釈できる」「密告や監視社会につながる」「報道や研究が萎縮する」などの反発が相次いだのだ。 特に問題視されたのは、情報を渡しただけでなく「未遂」「予備行為」「共謀段階」も処罰するとしていた点だ。 「内心」や「関係性」にまで踏み込む危険があるとして、法案はやがて廃案に追い込まれた。

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