高市早苗がギリギリ回避した“最悪シナリオ”。米トランプとの会談で封じ込めた円高誘導と国債暴落の危機

 

高市とトランプに共通する「大衆政治家」の宿命と行動原理

そうではあるのですが、高市氏もトランプ氏も、共に大衆政治家という宿命を背負っているわけです。その程度ということでは、トランプ氏ははるかに重いものを背負っています。ですから、いくらトランプ氏に迎合するのが下品でも、その後ろには猛烈な反エリート排外感情を抱えた世論が存在します。そんな中では、トランプ氏に対して「お行儀よく反発する」などという行動は、意味を成しません。

この点においては、日本の場合は制度がうまい具合にできているということもあります。象徴天皇制の日本としては、総理大臣とはあくまで行政府の長であり、実務家であり、実利を追求する役割です。国民統合を象徴する存在ではないので、この種の逸脱行動(ハグとかガッツポーズなど)を行っても、国の威信は全くもって揺らぐことはないのです。

そんなわけですから、今回の総理訪米はイラン情勢と、日本の対米投資というのがテーマという理解がされていました。そして、どちらも総理は「合格点」を獲得した、これは間違いありません。その一方で、その裏では別のメカニズムが働いていたと考えられます。それは、日米における金利と為替の問題です。

まず、日本側の事情としては財政規律の問題があります。具体的には、高市総理に対する国際市場の評価というのが問題となっています。高市総理は長年にわたって「積極経済」を口にしてきていました。これによって、30年来の財務省の戦略に変化が生じるのではないか、国際市場はこの点を息を詰めて見守っているのです。

その背景には長いストーリーがあります。1990年代の日本経済の急激な下降に対して、例えば小渕恵三政権は思い切り財政出動を行って景気の浮揚を図りましたが、空振りに終わりました。このコラムが以前にお世話になっていた村上龍氏の「JMM」は、この小渕政権の失敗を契機に始まった日本の「失われた年月」への危機感からスタートしていたことも想起されます。

これに対する一種の反動が小泉純一郎政権であり、いわゆる「骨太の政策」という奇妙な「小さな政府論」がその具体化でした。以降の20年、反対に日本は曲がりなりにも財政規律を意識してきたのでした。その点で財務省は一貫していたわけです。若い世代に「ザイム真理教」などと揶揄されるその行動原理ですが、その背景には、日本の国家債務が既に危険水域に入っているという認識があったのでした。

1997年に韓国やタイで起きたアジア通貨危機、つまり国債のデフォルトという現象を見て、当時の財務官僚は心の底から恐怖を感じたのです。しかも当時の日本経済はまだまだ大きく、仮に日本が破綻したらIMFも連鎖倒産して世界は大恐慌となる、そんなシナリオも意識されていたのでした。実際は、この時点では日本経済は「倒すには大きすぎる」規模を維持していました。ですから、日本を破綻させることは困難ではあったのです。

ですが、危機感ということ自体は悪いことではありません。ただ、この想いは、戦前からの悪しき伝統に従って、都市の高学歴層に強く、どういうわけか中道左派的な属性を持っていました。例えば2009年から3年にわたって国政を担った民主党政権は世界的に見れば超タカ派の経済財政政策を採用するなど、財政規律については厳格な志向を持っていました。選挙に負けて崩壊する前の野田立憲も同じで、これも自分たちエリートがしっかりしないと国家が破綻するという知的でロマンチックな悲観論が背景にあったのです。

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