高市早苗がギリギリ回避した“最悪シナリオ”。米トランプとの会談で封じ込めた円高誘導と国債暴落の危機

 

「3月末」という危険なタイミングが招いた為替と金利の綱渡り

問題は3月末という訪米時のタイミングでした。まず、日本の大企業の多くは多国籍化していて連結決算における海外比率が高くなっています。ですから、円安になれば円建ての売上利益は大きく見えます。反対にこのタイミングで急に円安になると多くの企業の決算は悪化して、新年度の賃上げなども吹き飛んでしまいます。また、金利に関しても更にアップすると、新年度の国債利払いの予算が急激に膨らんでしまい予算が組めなくなります。

そんな中で、例えば日米首脳会談のタイミングでアメリカがいきなり強めの「円高ドル安誘導」を行うような、それこそプラザ合意の二の舞のような事態となれば、危ないところでした。同じように米国の利下げというのも、仮にドル安誘導の文脈と連動するようだと、円を更に押し上げてしまいます。

その一方で、仮にペルシャ湾に対する問題で、日本が困難な立場に追い込まれるようなことになれば、国力衰退につながるとして国際市場では円は売られて下がり、同時に長期国債は暴落(金利上昇)となっていたかもしれないのです。

そう考えると、今回の日米首脳会談の位置づけは、すごく「危ないギリギリの状況」であったということが分かります。ハグだとかガッツポーズだとか、演技で済むのなら、女優高市早苗としては、いくらでも体当たりでやる覚悟だったのでしょうし、そんな危険な局面でもあったのです。

結果的には、日米首脳会談後の日本株は多少の上下がありましたが、円はやや安い水準で落ち着いています。超長期国債金利も劇的には改善していませんが、落ち着いています。ということで、高市政権としては年度末の危機をほぼ乗り切ったと言えると思います。今回の首脳会談について言えば、実はこれが本筋であったわけで、だからこそ茂木、赤澤という重要閣僚も同行したのでした。

では、このまま政権は順風満帆に進むのかというと、全くそうではありません。まずイラン情勢ですが、高市=トランプ会談を契機に様々なファクターが鎮静化に向けて動いていますが、これが半月以上「持つ」かは分かりません。イスラエルが、更に冒険主義をエスカレートしたり、4月以降の展開は全く読めないからです。仮にシナリオが悪い方にシフトして、原油が1バレル120とか140といった水準になれば、日本経済の出血は加速します。

そんな中で、新年度に例えば、トランプ政権が火を付けて円高が進むシナリオの場合、日本の不動産と株に関しては、海外の投資家が「利益確定」に走ることで、暴落の危険があると思います。その一方で、このまま財政の好転が見えない場合は、さらなる円安の中で長期金利は上がり続けます。そうして「日本円は二度と輝かない」と市場が判断した瞬間に、株と不動産には「損切り」の売りが入るかもしれないのです。

例えばですが、ここ数ヶ月のアメリカでは日本発の世界恐慌というネタが流行っています。ホンモノのアナリストではなく、例えば動画などで発信しているインフルエンサー的な人々が、次のようなメッセージを出しているのです。それは、

  1. 日本の財政が減税などで破綻まっしぐら、
  2. そこで日本が保有する米国債を売りに出す、
  3. 米国債も暴落、
  4. 株価も含めて全体がクラッシュ、
  5. 肥大しているノンバンク融資なども吹っ飛んで金融危機の再来、

というストーリーです。

荒唐無稽ではあるのですが、日本の財政が相当に悪いということと、今の総理が緊縮ではなく積極経済論だということは、日本の歴史や文化に詳しくない世代にもかなり広まっています。これは全くもって、良いことではありません。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 高市早苗がギリギリ回避した“最悪シナリオ”。米トランプとの会談で封じ込めた円高誘導と国債暴落の危機
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け