高市早苗がギリギリ回避した“最悪シナリオ”。米トランプとの会談で封じ込めた円高誘導と国債暴落の危機

 

アベノミクスの限界と「積極経済」に向かう日本の転換

その前に実際に野田民主党が政権を維持していた際に、これを批判して登場したのが第二次安倍政権でした。「アベノミクス」を掲げて登場した第二次安倍政権は、確かに金融緩和は行いました。ですが、投資姿勢は保守的なままでした。そして、何よりも円安に振っても原油が安いので日本経済にはオッケーという「ラッキー」にも恵まれたのでした。

そんな中で、財政規律を緩めてもいいという言論も2010年代から20年代半ばまではありました。例えば、日本の国家債務が危険水域に深く入り込んでも超円安が起きないのは、巨大な国債発行残高が国内の個人金融資産で消化できているという神話がありました。これに加えて、MMT理論、つまり政府の貨幣発行は資本金の増資のようなもので、弊害はないという新興宗教のような話が世界で流行しており、日本でもこれに乗っかる議論も見られたのです。

更に、一時的な動きとしては、コロナ禍に対抗した財政出動については、中国、アメリカ、欧州ともに限界一杯のカネを突っ込んでいました。ということは、いくら国家債務では劣等生でも、日本の通貨というのは「比較すると優等生」であり、何もしないと「すぐに円高になる」体質、つまり比較優位があるという感覚のあった時代もありました。こうした感覚を背景に、菅義偉氏と総理総裁の座を争った時期の高市早苗氏は「積極経済」を口にしたのであり、以降、これは彼女のトレードマークになっています。

ただ、万年総裁候補であった時期の高市氏は、とにかく「保守票頼みの一本足打法」でしたから、「第三の矢」に失敗した安倍晋三氏と比べても、より「構造改革」は言い出せない立ち位置でした。ですから、いわゆる「サナエノミクス」というのは、金融緩和と財政出動が主であり、そこには強靭化理論が乗ったり、軍需産業育成がくっついたりしていたのでした。

そして、今回、最終的に総理総裁に上り詰める中では、より大衆政治家として「減税するしない」の議論において、危ないレトリック(検討の加速)で権力を奪取しているわけです。そんな中で、今回の訪米直前の時点では、高市総理の立場はより切迫していました。まず総理就任後の為替相場は穏やかながら明確な円安傾向にありました。総理総裁候補として長年「積極経済」を主張してきた総理には、国際市場からは財政規律を緩める政治家というイメージが定着していたからです。

更に問題なのは、超長期国債の金利が高騰していることでした。一時期には4%を大きく超える危険水域に突っ込むという事態もあったのです。つまり、高市氏のもとで財政規律が緩んだままでは、40年ものの超長期国債の償還を迎える頃には、日本の財政は顕著な悪化が進む可能性が濃いという判断から、市場において金利が上昇(つまり国債は下落)したのでした。

数ヶ月前までは、ドル円相場が円安に振れるのは「日米の間に金利差がある」からだという説明がされていたわけです。そうなのですが、現在起きているのは日本の金利が上がって、日米の金利差が縮んでも円が高くならないという現象です。金利差の影響を、財政悪化懸念が帳消しにしているとも言えます。これはかなりマズい傾向です。

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