インドは日本の思惑に乗るほど甘い国か?高市早苗という“安倍外交の後継者”が夢見る「中国包囲網」の現実

 

「中国排除」政策を墓場から掘り返してはこないインド

実は、この「緩和」の動きをロイターは今年1月、すでに「インド、政府契約入札に中国企業の参加禁じた措置を廃止へ=関係者」という記事で予告していた。

つまり「緩和」は既定路線であり、どのタイミングで発表してもよかったのだが、それをわざわざ高市首相が去った直後に発表した意味は大きい。どう考えても中国に対するメッセージだからだ。

中国は、高市首相のインド訪問を「中国への対抗」と受け止めていて、定例会見で質問を受けた外交部の報道官も、「(日本は)自由や開放を叫びながら心の中では対立と対抗を考えている」と反発した。

つまりインドは中国が日印に向ける警戒心を和らげるためにも、このタイミングで対中規制緩和を発表したのである。

記事の前半でも書いたように、インドのこうした中国接近の兆候は、この2年ほど頻繁に繰り返されてきた。

実際、中国企業の政府案件への参加の道が開かれる前の3月10日には、投資規制も緩和されている。

では、2020年の中印両軍衝突から徹底して中国製品を排除してきたインドが、どうしてにわかに中国を受け入れる方向へと舵を切ったのだろうか。

その謎を解くカギは2025年3月24日に配信されたロイターの記事にある。タイトルは「インドの国内製造奨励制度、終了へ 中国対抗も効果振るわず」だ。つまり4年間やってきた「中国排除」の結果、それが損だと学び、政策を大きく転換したということだ。

ちなみに国内製造奨励制度は、インドが「中国依存脱却」を進める外国企業を獲得するための取り組みで、4年前に始まったばかりだった。

つまり日本が今、「中国以外の…」と繰り返している、その受け皿としてスタートした制度であり、それをインドは、すでに1年前に「失敗」という烙印を押し、葬っているのだ。

そのインドがいまさら「中国を念頭に」と持ち掛けられたところで、もう一度「中国排除」政策を墓場から掘り返してくるだろうか。

モディ首相の「妹」を見る目は、きっと冷ややかだったのではないだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年7月5日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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