理想を言えば、このスタートダッシュは早ければ早いほど有利です。
例えば、内定が決まった大学4年の秋。
入社するまでの間にマナー本を読み漁り、挨拶の仕方、敬語の使い方、名刺の差し出し方、タクシーでの席次など、学生時代には意識していなかった社会人の必須常識を一気呵成に学んでおく。
一見すると正しそうな「ご苦労様です」「さすがです」「了解しました」といった言葉が、実は目上の方には使ってはいけない無礼な表現であると事前に知っておくだけでも、入社後の立ち回りは大きく変わります。
さらに、配属先が決まった瞬間に、その道の専門性を高めるための計画的な予習を始める。
経理部への配属なら簿記の勉強、総務部なら社会保険労務士や法律の勉強、営業部なら営業スキルや会話術の本を読み込む。目的もなく闇雲に勉強するのではなく、配属先に合わせてピンポイントで知識を仕込んでおくのです。
実務経験がないぶん、せめて専門的な基礎能力だけでも磨いておく。
そうすれば入社後、基礎をいちいち先輩やAIに頼って確認する必要はなくなり、会社独自の決まり事や現場のリアルな慣習を聞くだけで済むようになります。
……と、ここまで偉そうに「理想の形」を語ってきましたが、実はこれ、若き日の私の姿ではありません。
本当の私は、要領が極めて悪い、絵に描いたような「ダメダメ新人社員」だったのです。
私が必死になって勉強を始めたのは、新卒で入った建設系のブラック企業で、「使い物にならない経理」として周囲から邪険に扱われ、強烈な挫折感を味わったときでした。
「このままでは、自分の人生が本当にダメになってしまう」と、追い詰められて初めて奮起したのです。ですから、私は人一倍、回り道をしてしまいました。
当時は今のように、YouTubeやオンライン学習、ましてや疑問を瞬時に解決してくれるAIといった便利なツールは一切ありません。
自宅に音声のカセットテープが送られてくるだけという、今思えば過酷な環境でした。
そんな時代に、働きながら難易度の高い資格を取るのは並大蔑のことではありません。
しかし、危機感に突き動かされた私は、寝る間も惜しんで一気呵成に勉強しまくりました。
建設業簿記、日商簿記、さらには宅建の勉強まで、狂ったように知識をインプットしたのです。
すると、どうなったか。
あれほど苦痛だった特殊な会計や税法にも格段に詳しくなり、気づけば上司や先輩から「これ、どう処理すればいい?」と意見を求められる立場になっていました。
職場での評価はガラリと変わり、一目置かれる存在へと変わっていったのです。
一度、頭の中に圧倒的な知識ベースを身につけてしまえば、実務で悩む時間や調べる時間は劇的に減ります。
それ以降は、どんな仕事が降ってきても要領よく、スピーディーに対応できるようになりました。
まさに、知識の「永久脱毛」が完了した瞬間でした。
当時の私にAIがあればもっと効率よく学べたかもしれませんが、あのとき必死に作った「自分自身の土台」があるからこそ、今どんな新しいテクノロジーが来ても気後れせずに使いこなせています。
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