1、今回成立した皇室典範改正~皇統継続確率68.7%
今回の改正は、大きく二つの柱から成り立っている。
第一は、女性皇族が一般男性と結婚した後も皇族の身分を保持できるようにすることである。これまで女性皇族は、一般男性と結婚すると皇籍を離れなければならなかった。改正によって、愛子内親王や佳子内親王を含む未婚の女性皇族は、結婚後も皇族として公務を続けられる。ただし、その配偶者と子どもは皇族とはならない。女性皇族本人にも皇位継承資格はない。
第二は、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える制度である。対象は、1947年に皇籍を離れた11の旧宮家につながる男系男子で、原則として15歳以上の未婚者とされる。養子本人は皇位継承資格を持たないが、皇籍取得後に生まれた男系男子は、将来の皇位継承候補になり得る。
このポイントを解説しよう。今回の改正によって直接増えるのは、皇位継承者ではなく、「皇族の人数」である。女性皇族が結婚後も皇室に残れば、公務を担う人員の減少を防ぐことはできる。しかし、女性皇族本人にも、その子どもにも皇位継承資格がない以上、女性皇族の身分保持だけでは皇統継続確率はほとんど上昇しない。
皇統継続確率を押し上げる中心的な要素は、旧宮家系男子の養子制度である。ただし、この制度には時間差がある。養子として皇籍を取得した男性本人が、直ちに皇位継承者になるわけではない。その男性が結婚し、その後に男子が生まれて初めて、新たな継承資格者が加わる。つまり、次の五段階をすべて通過しなければならない。
- 旧宮家系男子が皇籍取得を希望する。
- 現皇族との養子縁組が成立する。
- 皇籍取得後に結婚する。
- 子どもが生まれる。
- その子どもが男子である。
仮に、上記5条件の一つでも成立しなければ、皇位継承者は増えない。ここが、今回の改正を評価するうえで最も重要な点である。制度上、旧宮家に男子が存在していることと、その人物が実際に皇室に入り、結婚し、次世代の男子を残すことはまったく別の問題だ。
NoBorderNewsの取材によれば、旧宮家の関係者からは、厳しい制約を伴う皇族への復帰に消極的な声も出ているという。旧宮家の男系男子を制度上の「人数」として数えるだけでは、現実の継承可能性を過大評価することになる。
今回のAI解析では、複数の旧宮家系男子が皇籍を取得する可能性を織り込んだ。それでも、100年間の皇統継続確率は68.7%にとどまっている。
確かに今回の改正で、皇統断絶のリスクを確実に下げることになるが、問題の根本的な解決にはつながっていない。男系男子だけに継承資格を限定する構造を維持したまま、候補となる家系を外部から補充したのでは解決に至らないのは当然だろう。今回の改正は「根本的な制度改革」ではなく、「現在の制度を維持するための延命策」と表現するほうが正確だろう。
2、女性天皇を認め、危機時には女系継承も認める~皇統継続確率91.8%
第二案は、男系男子を原則として維持しながら、女性皇族にも皇位継承資格を与える方法である。例えば、継承順位を次のように設定する。
- 天皇の男子とその子孫
- 天皇の女子とその子孫
- 天皇の兄弟姉妹とその子孫
- その他の最近親の皇族
男系男子を優先しつつ、男系男子による継承が困難になった場合には、女性天皇および女系の子孫に継承資格を広げるというものだ。いわば、20年前の小泉首相による皇室典範改正の有識者会議の答申に近い案だ。
この制度では、女性皇族の結婚後の身分保持が、単なる公務要員の確保ではなく、皇位継承制度そのものにつながる。愛子内親王を例にすれば、女性皇族として皇室に残るだけでなく、皇位継承資格を持つことになる。
AI解析では、この制度の100年間の皇統継続確率は91.8%となった。今回成立した改正法より23.1ポイントも高い。皇統の途絶えるリスクは8.2%、およそ12世代に1回の危機にまで低下する。
理由は単純だ。男子だけでなく女子も継承候補になるため、子どもが生まれれば性別にかかわらず次世代の皇統を形成できるからである。
ただし、この案には制度上の曖昧さが残る。「男系男子による継承が困難になった場合」とは、いつなのか。継承資格を持つ男系男子が一人になった時か、二人以下になったときか、年齢や結婚の有無まで考慮するのか。個々の皇族の結婚や出産可能性を、その時々の政府や国会が判断する制度にしてはならない。
そのため、この案を採用する場合には、女性・女系継承へ移行する条件を法律で明確にしておく必要がある。例えば、男系男子の継承資格者が二人以下となった時点で、女性皇族を正式な継承順位に加える。
あるいは、最初から男女双方に継承資格を認めたうえで、順位だけ男系男子を先にする。いずれにしても、政治が特定の皇族の人生を見ながら判断する余地はできる限り排除すべきである。
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