実力より金力がものをいうようになった「ムラ社会」
福岡県議会議長、藏内勇夫氏。1987年の県議選に初当選して以来、10期連続で当選を果たし、全国都道府県議会議長会の会長をつとめる大物中の大物だ。自民党県議団はもちろん、野党会派にまで影響力をおよぼし、「数」をまとめる力で議会を支配しているため、その意向は国政選挙の自民党公認候補選定まで左右するほどである。福岡には麻生太郎氏、武田良太氏といった大物政治家がいるが、彼らとて藏内氏を敵に回したくはないだろう。
そんなわけで、福岡県議会の議長、副議長などのポストは、蔵内氏の腹一寸で決まる状況が長年にわたって続いてきた。蔵内氏の歓心を買って余禄に預かろうとする連中がはびこるのも当然で、いつの間にか、彼らが形成する「ムラ社会」においては、実力より金力がものをいうようになった。
議長就任に1,000万円、副議長就任には500万円。これが慣例だったと吉松氏は言う。それを裏付ける発言をしたのは吉松氏が議長だった1年間、副議長を務めた江藤秀之県議だ。
吉松氏は2019年10月に議会棟の中で1,000万円を松本氏に手渡したが、江藤氏の場合は、就任前に博多の老舗料亭で開かれた懇親会で、茶封筒に入れた500万円を直接、藏内氏に手渡したという。この宴席には議長・副議長に就任予定の吉松氏、江藤氏と、蔵内氏、中尾氏、原口氏ら幹部5人が顔を合わせた。「藏内さんが早めに来たので、現金500万円を手渡した。慣習に従った」と江藤氏は説明する。
しかし、彼らの証言は、藏内氏、松本氏、中尾氏、原口氏によって一斉に否定された。藏内氏は記者の問いにこう答えている。
記者 「直接的にも間接的にも誰からも金銭は受け取っていないということでいいか」
藏内氏 「議会内の人事に関して、私はそういうことはあり得ません」
記者 「選挙の公認や支部長などに関してはどうか」
藏内氏 「全くありません」
それなら、日弁連ガイドラインに基づき、独立性の強い第三者委員会で客観的な調査をしたらいいようなものだが、藏内氏にはその気が全くない。その理由は「選挙が近い。それまでに短期間で調査をやっていただくことが大事」。つながりのある弁護士に任せて有利な結論を得ようとしているようだが、それで県民が納得するだろうか。
音声を暴露された中尾氏はメディアの声紋鑑定結果を受けて、自分の声と認めざるを得なくなった。それでも「そもそもお金を受け取ってない」という主張は変えようとしない。1,000万円を受け取ったとされる松本氏も「吉松氏、中尾氏と三者で面談したことはない」と真っ向から否定した。
吉松県議は、2024年10月の衆院選(福岡4区)に無所属で出馬した責任を取り、自民党を離党している。そんないきさつもあって、自民党への「政治的裏切り」という批判もあるようだが、これだけ具体的で詳細な告発が事実無根とは思えない。
2019年5月から20年6月まで福岡県議会の議長を務めた現在の厚生労働大臣政務官、栗原渉氏は15日の衆院厚生労働委員会で、金銭の支払いについて問われ、「一切ないし、何も存じ上げない」と語った。吉松氏の前任議長だけに、信じがたいことだ。
「ムラ社会」はボスを頂点とするタテ構造だ。取り巻きがボスを支え、その下にピラミッド型の序列が形成される。その秩序を守るために、ボスが不利になる発言はご法度ということらしい。
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