一方でドラマ「手塚治虫の戦争」は1970年代に経済的にも漫画家としても危機にあった手塚治虫が創作の原点であった戦火での出来事を振り返り、自身の戦争体験をもとに1974年に少年キングに掲載された『紙の砦』を描いていくストーリーだ。
「漫画の神様」も劇画の時代にほんろうされ、アニメーション事業を手掛ける虫プロダクションが倒産し、個人的に1億5000万円とされる借金を背負う「冬の時代」(手塚)の出来事。
漫画が自由に描けなかった時代の窮屈さの中で、ただ漫画を描くことが大好きな夢想的な少年は、隠れて漫画を描き、空襲の中を生き抜いていく。
終戦し、明かりが灯った街を見て「生き延びた」と叫ぶ姿が印象的だが、傍らにいて空襲で顔に大きな負傷した女性の表情が切ない。
この巨匠が描くキャラクターが今も生き生きと、読者や視聴者を惹きつけるのは、生きる意味合いを深く知っていた者が描く、吹き込まれた命があるからなのだと、つくづく考えさせられる。
これらの作品は、9月にインド南部のベンガルールにあるセントジョセフ大学での5日間の集中講義を準備していた時で、テーマは「コミュニケーションの日本的視点」ではあるが、そこにはアニメと漫画に関する演目も多い。
特に日本のアニメの発展には戦争との関係を語るのは不可欠であり、手塚治虫が誕生させた鉄腕アトムへの思いも、水木しげるが描く妖怪たちも、戦争体験なしには成り立たない。
さらに宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダムにおける戦争観とは日本が体験したメンタリティが背景にあることも説明する。
さらに宮崎駿によるジブリ作品にも戦争の愚かさをあぶり出すストーリーと表現が作品を支えていることにも言及する予定だ。
これらの中心にあるのは、今回のNHKで放映されたような水木しげると手塚治虫のような強烈な原体験であることは間違いなく、それを語りつなぐことを、日本だけではなく、インドでも伝えていくことを自分なりの使命にしたいと考えている。
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