あいまいな立ち位置のまま同盟国に防衛費増額を迫るトランプ
実際、トランプ政権の対中圧力は明らかに弱まっている。商務省や財務省が米中経済戦争の表舞台から後退する中、現状ではFCCだけが孤軍奮闘している状況だ。
FCCは昨年12月、新たな中国製ドローンの輸入に厳格な禁止措置を決め、今年4月には中国の通信事業者(中国移動、中国電信、中国聯通)が米国内でデータセンターを運営することを禁止する提案を前進させた。
また、香港の通信事業者HKTインターナショナルの米国での事業を禁止する措置も進め、5月には民生用ルーターの新型モデルに対する規制をかけ、7月にはロボットとパワーインバーターに対する規制を実施したのである。
これに対して中国が「目には目を」というやり方で対抗したことは、このメルマガでも詳しく書いた。
【関連】トランプに「目には目を」で報復。中国が対抗措置で突きつけた“安全保障カード”と、露呈した米国の“中国依存”という実態
だが、あらためて触れるまでもなく、習氏の訪米に向けた準備は、一方で着々と進められているのだ。
これは『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が書いているように、トランプ政権が「抑制のきいた規制」に留めているからなのだろう。
このトランプ政権の傾向は、安全保障政策の面でも見事に反映されている。
そのことは米誌『フォーリン・ポリシー』が記事「コルビーの『フレキシブル・リアリズム(柔軟な現実主義)』はインド太平洋では機能しない」(8月18日)の中で詳しく書いている。
例えば、<ワシントン自身が増す一方の脅威を明確に特定することをためらっているように見える中で、同盟国に対してその脅威に立ち向かうための大幅なコスト増を期待する。>という記述だ。アメリカの政策が機能しないのは、日本や韓国、フィリピンに防衛費の増額を強引に求めながら、自分はあいまいな立ち位置を取っているためだと喝破する。
その象徴的な動きの一つが対北朝鮮であり、もう一つが最近東南アジア巡りを終えたばかりのエルブリッジ・コルビー米国務次官の言動だという。
コルビー氏のマニラでの演説では<拒否的威嚇(deterrence-by-denial)という概念に基づく自らの防衛戦略が、圧倒的に中国軍の脅威を対象に設計されているにもかかわらず><「中国」という言葉を一度も発しなかった>というのだから指摘されるのもむべなるかな。
自分は中国、北朝鮮と接近しながらも、同盟国には中国の力を削ぐための駒になれと命じる。そんな戦略にまともな政権が乗っかるはずなどないのである。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年8月23日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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