「テックマネー」に首根っ子を押さえられているDD
3)AI革命について
偶然かもしれませんが、2)のイスラエル支持と同じようなパターンになっています。まず共和党では、基本的にAI開発も、AI企業の資金調達も特に反対する勢力はありません。規制が嫌い、自由競争が好き、自己責任論、アメリカの技術優位を守りたいなど、共和党のカルチャーからはAI開発への反対や疑問は薄いのです。
問題は民主党です。まず、DSAはAI開発には懐疑的です。多くのDSA政治家が自分のエリアにおける「データセンター建設の停止・凍結」を主張していますし、国のレベルでの規制も主張しています。理由としては「雇用を奪う」「格差を拡大する」「環境に有害」というロジックで、そもそもはEU内の中道左派が言い出したことのモノマネの範囲内です。ですから、AIによる文明の変化、人間の役割の変化など根源的な問題からの疑問ではないのですが、とにかくDSAはアンチAIです。
では、DDはどうかというと、こちらはAIには反対していません。どうして反対しないのかというと、「世代的にAIの脅威に鈍感」「90年代のIT経済成功の延長で考えている」ということもあると思います。ですが、何と言っても「シリコンバレーなどAI推進勢力が巨大な寄付金を提供」ということで、テックマネーに首根っ子を押さえられているからです。
4)格差について
まず、民主党と共和党のラインには決定的な差があるのは事実です。仮に、格差を問題視し、富裕層への課税強化を原資として強い再分配を志向するのが10点だとすると、共和党の場合は「RR」も「MAGA」も基本は「ゼロから1」でとにかく自己責任カルチャーが強いのです。
一方で民主党の場合はここでも深刻な分裂を抱えています。DDの場合は、10点満点なら4点ぐらいの再分配を志向していますが、DSAの場合は、10点満点をやれという主張です。つまり富裕層には徹底した課税をして、その税収を原資として貧困層に強烈な再分配をやれというのです。
5)医療保険
格差是正の関連になりますが、依然として医療保険についても対立軸があります。現時点では、いわゆる官民折衷の国民皆保険制度である「オバマケア」については、最高裁が合憲判断をしています。また年を追うごとに定着してきているのも事実です。ですから、「DDの全体」と「RRの一部」は一応この枠組みの中にあると言えます。「MAGA」については、健康は自己責任で相互扶助を拒否する極右思想ですので、「オバマケア廃止」が目標です。一部の「RR」における「小さな政府論」からも、廃止論があります。
問題は「DSA」です。彼らは2016年のサンダース旋風の際に正面切って「オバマケア批判」を行っており、以来ずっと徹底した「オバマケア反対」です。具体的には、「単一支払者保険」つまり、政府による完全公営の医療保険の実現を悲願としています。
オバマケアがどうして官民折衷なのかというと、やや簡素化して説明すると、次の4層建てになっているからです。
- 貧困層向け医療保険(メディケイド):州ごとの公営
- 勤労者向け保険:引受は民間の営利企業である保険会社で保険料は労使で折半
- 自営業向け保険:引受は民間の営利企業である保険会社で保険料は政府と本人で折半
- 高齢者向け保険(メディケア):国による公営
というわけで、現役世代向けの保険というのは、雇用主もしくは政府が半額を支援するものの、引受は民間の営利企業です。DSAは、この点が許せないとしています。そしてこの4カテゴリの全てを公営にせよという主張で一貫しています。そうしたことを進めれば、結局は英国やカナダのように満足度の低い保険になってしまうのですが、とにかく「命の問題は公共が担うべき」というイデオロギーを前面に押し出しているのです。
このDSAの場合は、例えば「ユナイテッド・ヘルスケア」保険のCEOが暗殺された事件で、実行犯の支援を行うなど、かなり徹底した姿勢を貫いており、だからこそ若者に人気があリます。とにかく、この医療保険問題については、DSAとDDは、お互いに妥協の余地はないようです。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









