「27年1月21日以降」にヴァンスがクーデターに走る可能性も
さて、ここまで9項目に分けて見てきたわけですが、こうした対立構図がベースにある中で、選挙戦が進行しているわけです。最後に注目ポイントを確認して参りましょう。具体的な議席の動向については近々に、また冒頭申し上げたようにアメリカとは異なり地理的な利害の総意が浮き彫りになりつつある日本のケースについては、また別の機会に議論させていただければと思います。
では、アメリカ政局の注目点です。
a)今回の中間選挙について民主党では、DDはDSA候補だとユダヤ票が逃げるとして批判、一方で、DSAはDDだとパレスチナ同情票が逃げると批判。この問題がかなり激しい内部抗争になっており、民主党の抱える頭痛のタネと言える
b)MAGA一般については、やはり無党派中道票から見ると「ドン引き」状態。したがって、DTが無理にMAGA候補にスイッチした選挙区の動向が大注目
c)民主党の2028年へ向けた大統領候補としては、DSAのAOCの人気が上昇中。世代の問題もあるので、DDの対抗馬としてジョージア選出のジョン・オソフ上院議員(39歳)への待望論がある。オソフは典型的なDDで、なおかつ父方がユダヤ系でイスラエル支持。従ってAOC対オソフの抗争は激しくなる可能性。一方で旧世代のDDであるハリス、ニューサム、ブティジェージなどは存在感薄い
d)一方の共和党では、2028年の有力候補としては、現時点ではヴァンス(副大統領)とルビオ(国務長官)。どちらも大方の感触としてはMAGAに追随しているものの本籍はRR(ヴァンスはDD??)と見られている
e)仮にDTが今回の中間選挙に「勝った」ことで、弾劾を蹴って生き延びたとすると、DTは共和党のキングメーカーになる可能性大。そうなると、残りの任期2年間も「激しい活劇の上演」を続ける必要が出てくる。その場合に国際経済や国際政治、更には軍事情勢の不安定化リスクは高まる
f)反対に2027年1月末の新議会で、DTが弾劾必至となり辞任となった場合。自動的にヴァンスが昇任。そこで問題になるのがDTの周辺人物を恩赦するかの選択。フォードがニクソンを恩赦して落選した前例もあり、これは大きな焦点になる。仮に弾劾のための連合(コアリション)がDSA+DD+RRで成立した場合、ヴァンスの権力はこれをベースに成立するので、その勢いでDTの周辺人物の恩赦を拒否できる可能性。
そうなると、DTの影響力を一気に消せる。そのうえで、DD+RR連合で2年間政治を進めてNATOのある程度の正常化などをやった場合、民主党がDSAのAOCを候補に立てたりすると、ヴァンスには到底勝てない。ヴァンスは昇任が遅ければ憲法上2回選挙に出られるので10年の安定政権を狙うかもしれない。ここへきて、ヴァンスが表舞台から少し下がっているのはその予兆か。いずれにしても、ヴァンスにとってはDTからの禅譲シナリオは避けたいはず
もしかすると、弾劾を生き延びたDTがキングメーカーとなるのを阻止するために、選挙後に(厳密には27年の1月21日以降、でないと選挙に一回しか出られない)ヴァンスが憲法修正条項によるクーデターに走る可能性も
g)ここへ来て「オンタリオ湖改名」だとか、「大西洋も太平洋も改名」などという荒唐無稽な寸劇がかかっている。これは、4つどもえの権力闘争の中で、DT系のMAGA候補をなにが何でも勝たせるためには「境界レベルのリテラシー」層を投票所に引っ張るしかないという切迫感の結果と見られる
h)DDとDSAが一緒の政党内に共存できているのは、DT憎しという要素が強い。仮に弾劾が成功してヴァンスが昇任すると、DTを憎むエネルギーが消えて、DDとDSAの抗争はお互いを憎む回路に入る可能性が高い。ヴァンスは当然そうした事態を狙っているであろう
ということで、様々な角度から考察してみましたが、どう考えても今回の中間選挙というのは異常な選挙だということがご理解いただけるのではと思います。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年9月1日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「AI革命のもたらす雇用激変、対策への提言」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
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