怒りの矛先を参院幹事長に向けた高市早苗の「悪手」
高市首相を支える自民党議員グループ「国力研究会」を今年5月、麻生氏が呼びかけてつくったさい、茂木氏、小泉氏、小林氏といった総裁候補を発起人として仲間に入れながら、林氏一人を排除した。筆者は5月14日発行の当メルマガに、麻生氏の思惑について、こう書いた。
なにしろ、茂木、小泉、小林といった面々を束ねて動けるのである。彼らは高市首相を支えるという大義名分、そして麻生氏が中心になっているという重い事実には逆らえない。なにより、麻生氏の呼びかけを断れば「反高市」の旗を鮮明にすることになり、政権内での立場を失う恐れがある。仕方なく、「高市支持」という檻の中に閉じ込められる道を選んでしまったといえるだろう。
(中略)
麻生氏は、この議連を単なる「応援団」ではなく、総裁レースをキングメーカーとして取り仕切っていく「装置」として捉えているように思える。総裁候補の一人である林芳正総務相を外しているのが何よりの証拠だ。
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党内に唯一残った派閥を率いるキングメーカー・麻生氏にとって、総裁選こそが力の源泉である。この時から、麻生氏は林氏を念頭に置いた総裁選を構想していたのだ。
林氏は25年総裁選の初回投票で、議員票では高市氏を上回った。しかし、地方の党員・党友票で大差をつけられた。この弱点を補うため、林氏は総務大臣の「公務」と称してさかんに地方回りに励んでいた。こうした動きは地方組織から党本部へと報告され、高市氏、麻生氏の耳に確実に届いていただろう。
林氏を留任させるかどうか。高市首相の方針が見えない中、9月11日の産経新聞が「独自」と銘打って、以下の記事を掲載した。
高市早苗首相(自民党総裁)が17日に実施する内閣改造で、林芳正総務相に留任を打診したことが分かった。林氏は受諾するか否かを近く判断し、首相に伝えるとみられる。
高市氏は2015年の総裁選における安倍晋三首相と同様、無投票再選が望ましいと考えていたに違いない。そこで、いったんは林氏の出馬を抑え込むため留任させようとしたが、産経にすっぱ抜かれる事態となってしまった。ここで麻生氏から留任に「待った」の声がかかり、方針転換したと推測できる。
むろん、林氏の周辺では総裁選への出馬をめざし「首相と袂を分かつべき」とする意見が強かった。林氏自身も迷っていたところへ留任の打診があり、検討している最中に、官邸から方針転換を告げられたということだろう。
ともあれ、これで来年の自民党総裁選が「高市vs林」を軸に展開される見通しとなった。だが、この構図は、高市首相としてはすこぶる厄介な要素を含んでいる。その種は、今回の人事で自らが撒いてしまった。
野党との人脈を築いている参院幹事長、石井準一氏の首を切ったことである。形式上は、党のルールに沿って松山政司参院会長が「再任しない」と言い渡したことになっているが、実際には首相の意思が働いているのは間違いない。
今年4月、高市首相ただ1人がこだわってきた今年度予算案の「年度内成立」は、時間切れで泡と消えた。首相は委員会審議を短縮させるなどして強引に衆院を通過させたが、少数与党の参院では、それに反発する野党の協力を得られる見通しがたたず、暫定予算に頼るしか手がなくなってしまった。
もともとその原因は自らが断行した衆院解散によって予算の審議入りが大幅に遅れたことと、中傷動画問題などで不誠実な答弁を繰り返したことにあったが、高市首相は「石井に騙された」と怒りの矛先を、野党との折衝にあたった石井氏に向けていた。この感情的なしこりが、参院の状況を無視するかのような今回の人事に結びついたといえる。
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