高市早苗が自ら撒いてしまった“厄介な”火種。林芳正の「閣外放逐」と参院幹事長の「首切り」で総裁選に灯る“黄信号”

 

無視できない「反高市」の大物と石井準一の親密な関係

石井氏は野党にも幅広い人脈をもち、いまや参院の実力者にのしあがっている。少数与党の参院において、野党と話ができるその存在は自民党の国会運営にとってきわめて貴重だ。ところが、高市首相はあえてその切り札を放逐したのだ。

石井氏は今年4月、「自民参議院クラブ」という名の党内グループを旗揚げした。派閥ではないというが、かつての「参院のドン」青木幹雄氏を意識した勢力固めとみていいだろう。参院の議席248のうち、自民党は101議席を占め、石井グループは40人をこえている。

そこで無視できないのが、「反高市」の大物、森山裕前幹事長と石井氏との親密な関係だ。森山氏はかつて青木幹雄氏率いる参院平成研のメンバーとして、石井氏や、石井氏が師と仰ぐ吉田博美氏と交友を深めた。彼らは野党との付き合い方の“奥義”を極めた面々といっていい。

その森山氏はこのところ、林芳正氏への傾斜を強めている。9月5日、地元・鹿児島で開かれた県連の政治資金パーティーに講師として林氏を招き、その後のTBS番組で「林氏は十分に総理を務める能力を持っている」と持ち上げてみせた。

言うまでもなく、森山氏は石破政権を支えた幹事長だ。林氏と同じく親中派で、与野党に幅広い人脈を持つ。高市首相の減税策に異を唱えて党税調のインナーを辞任した小渕優子氏の後見人でもある。

ともに田中角栄の系譜をひく派閥「平成研究会」のメンバーだった森山氏、石井氏、石破氏、小渕氏…。彼らが宏池会出身の林氏を総理にするために再結集する可能性は十分にある。その昔、宏池会が輩出した大平正芳首相を角栄軍団「田中派」が全面的にバックアップしたように。

林氏はさっそく動き始めた。9月20日、中谷元・前防衛相が高知市内で開いた国政報告会に駆けつけ、用意されたピアノでビートルズの『Let it be』の弾き語りを披露した。中谷氏も宏池会出身だ。長年の盟友である石破茂氏の政権では防衛相をつとめた。自民党リベラル派が反高市を鮮明にしてゆく動きは今後ますます強くなっていくだろう。

総裁選を意識し、麻生太郎氏の意向を酌みながらも、高市首相は今回の人事で独自色を出すことを忘れなかった。たとえば、閣僚候補には、どんなポストに就きたいのかのアンケートを配り、その記載内容を首相自身が読み込んで人事配置を判断した。ごまをすってくれる政治家をピックアップする手段との見方もできるが、派閥均衡や年功序列に囚われてきた自民党の歴史の中で、画期的な手法には違いない。むろん、入閣待機組やその周辺に大きな不満の種が残ったのは確かだ。

来年の総裁選を見据え、再選を勝ち取る体制を整えたかに見える高市首相だが、林氏を閣内から排除し、石井氏を参院幹事長ポストから外したために、党内の中道・リベラル派が結集する機運を生み出してしまった。

だが見方によっては、必ずしも悪くない状況といえる。高市人気によって党内世論の活力が失われている自民党。野党勢力が見るも無残に弱体化した国会。この閉塞状況を打開するという意味では、せめて自民党内で権力闘争が表面化し、激しい政策論争が繰り広げられるほうが民主主義国家として健全なのではないだろうか。

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image by: 首相官邸

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