【1-3.二つの時計】
議題で割れた交渉を前に進めるには、議題を一つにまとめるのではなく、二つの議題に別々の「時計」を与えるのが有効です。
ホルムズ海峡については、特定の航路の安全の保証と封鎖の一部の緩和を、中立の第三者の確認のもとで同時に進める短い時計を用意します。核については、60%の濃縮ウランの国外への搬出と査察の再開を、制裁の段階的な緩和と結び付ける長い時計を用意します。そして、二つの時計を同じ日に動かし始め、それぞれの進み具合を別々に確かめるのです。
気候変動交渉や生物多様性条約交渉、そして2015年までのSDGsの交渉の現場でも、複数の議題を一つの文書に押し込もうとして会議が止まり、議題ごとに別の作業の場と期限を与え直すことで前に進むという場面を、私は何度も目にしてきました。
もちろん、先ほど挙げた提案内容はどこにも合意されていない私の構想にすぎません。
【1-4.空母の増派と「選挙の後」】
交渉の外側では、軍事的な圧力が積み上がっています。米空母セオドア・ルーズベルトは9月27日にサンディエゴを出港し、翌28日には強襲揚陸艦マキン・アイランドを中心とする部隊が続きました。
増派の規模について、米AP通信は約9,000人、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は,9000人から1万人と伝えており、11月下旬までに中東地域に到着する見込みです。
同紙は、トランプ大統領が中間選挙の後に爆撃が再開されると側近に伝えたとも報じており、トランプ大統領自身も10月1日の米タイム誌のインタビューで、選挙後の行動は「あり得る」と述べました。
ただし、既に中東に展開しているとされる空母の姿が衛星画像では確認できないとガルフ・ニュースが報じており、実際の配置は慎重に見極める必要があります。
米ハドソン研究所のマイケル・ドーラン氏は10月2日の論考で、トランプ大統領は結局は腰砕けになるという見方を退け、米国はイランの港の封鎖を続けて「包囲する者を包囲する」戦略を貫けばよいと論じました。
同氏は、イランでは聖職者の体制が革命防衛隊による軍事独裁へと変わりつつあり、そうした体制は力で窮地を破ろうとするとも指摘しています。
その革命防衛隊は9月29日、「米国民への公開書簡」を出し、トランプ政権は「変えられなければならない」と米国の有権者に訴えました。
交渉の相手国の選挙に向けて、相手国の国民に直接語りかけるというのは、交渉の席の向かいに座る相手を飛び越えて、その背後にいる人々を揺さぶろうとする手法です。
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