AI関連企業の資金繰り悪化から市場暴落に至る5段階のシナリオ
4点目はノンバンク融資の変調です。プライベートクレジットではローンのデフォルト(支払い不履行)が2021年以来の高水準に達し、リターンも低下していると報じられています。債券ディーラーのPIMCOはデフォルトのサイクルが再来しているとし、レバレッジドローンや直接融資での損失拡大を予想しています。さらに10月には、データセンター向けの債務が債券化されて市場で売られ続けているという報道も出るようになっています。
さて、これらの4つの要素が悪い方向に噛み合った場合、次のような連鎖を想定することが可能です。
第1ステップ:出口の行き詰まり。AI企業や関連スタートアップに出資してきた投資家は、上場(IPO)で資金を回収することを前提にしていました。SpaceXの公開後の株価低迷とOpenAIの上場延期によって「上場すれば高値で売れる」という期待が崩れると、未上場株の評価額は見直しを迫られます。新規の資金調達は難しくなり、赤字を出しながら成長するAI企業は資金繰りに窮し始めます。
第2ステップ:ノンバンク融資の目詰まり。データセンター建設の資金は、銀行よりもプライベートクレジットに大きく依存しています。モルガン・スタンレーは、2028年までのデータセンター建設に必要な1.5兆ドルの半分以上をプライベートクレジットが供給し得ると推計しています。
ところが、2026年に米国で稼働予定のデータセンター容量のうち、30~50%が遅延や中止に直面すると見込まれています。建設が遅れれば賃料収入が入らず、借り手の返済が滞ります。ファンドには解約請求が集中し、流動性の低い資産を投げ売りせざるを得なくなる可能性があります。
第3ステップ:担保価値の連鎖的下落。データセンター融資の担保にはGPUなどの先端部品が含まれますが、技術の陳腐化は速く、評価額が下がる可能性があります。現在、AI関連の投資ということでは、データセンターABS(Asset Backed Securities:資産担保証券)、直接融資ファンド、投資適格社債などに分散するのが流行しています。
このような分散投資をしている投資家は、それぞれ無相関の資産を持っていると考えがちですが、実際にはすべてAI需要という同じリスクにつながっています。分散投資のつもりが、一斉に値下がりするわけです。
第4ステップ:シリコンバレー大手の設備投資削減。資金調達コストの上昇とAI収益化の遅れを受けて、大手テック企業の一社が設備投資の大幅削減を発表したとします。これが引き金となり、半導体、電力、データセンター関連株が一斉に売られる可能性はあります。SpaceXもAIデータセンター構想を掲げ、AI企業を傘下に収めているため、AI銘柄として売られる側に回ります。
第5ステップ:市場全体への波及。指数がAI関連銘柄に集中しているため、これらの下落はそのまま指数を押し下げます。年金や保険会社はプライベートクレジットの評価損を抱え、リスク資産全体を圧縮します。個人投資家の追い証や投資信託の解約も重なり、30%を超える下落、すなわち「暴落」に至る、というのがこのシナリオの全体像です。
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