トランプのあまりにも多すぎる“疑惑”の数々。米国中間選挙で民主党が上下院を制しても「大統領の罷免」が困難な理由

 

トランプ弾劾に慎重な民主党が準備する大規模な調査計画

民主党指導部の姿勢は弾劾が「排除もしないが、前提にもしない」というものです。下院議長就任が有力視される(但し左派の反発で混乱の可能性もゼロではない)ハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は、弾劾について「何も排除せず、何も確定していない」言っています。

弾劾について慎重な姿勢の背景には、過去2回の弾劾が罷免に至らず、むしろ支持層の結束を強めたという党内の反省があるようです。トランプ氏自身も1月の共和党議員会合などで「中間選挙に負ければ弾劾される」と繰り返し訴え、共和党は弾劾の脅威を投票動員の材料にしています。

一方で党内の突き上げも強まっています。第2期に入ってからアル・グリーン議員らが繰り返し弾劾決議を提出しましたが、2025年6月のイラン攻撃を理由とする決議は344対79で棚上げされ、民主党議員128人が棚上げに賛成しました。AP通信は、第3の大統領弾劾はかつてほどの政治的価値を持たず、民主党はむしろ閣僚の弾劾に焦点を当てる可能性が高いと分析しています。その場合は、まずはヘグセス国防長官を追及する可能性が高いでしょう。

さて、仮に弾劾を進めるとした場合、何が「容疑」になるか、これは具体的には見えてきています。民主党が調査の柱に据えるのは「トランプ一族の利益相反・汚職」で、弾劾条項に発展しうるのは「権力の乱用」「戦争権限の侵害」「議会妨害」の3類型と考えられています。

AP通信によれば、民主党は監督・政府改革、司法、外交、天然資源など複数の委員会にまたがる大規模な調査計画を準備しており、多数派になれば予算・スタッフの拡充と召喚状(サピーナ)発行権を得ます(PBS/AP)。主な疑惑と担当が見込まれる委員会は次のとおりです。

■「一族の蓄財・利益相反について」

2025年1月の再就任以降の一族の資産急増、暗号資産事業、鉱物取引への関与、カタールからの航空機受領について。

担当:下院監督委+天然資源委

■「司法省の政治利用」

コミー元FBI長官、レティシア・ジェームズNY州司法長官らへの訴追を「報復的」とする疑い

担当:司法委

■「エプスタイン文書の扱い」

司法省が文書の一部を意図的に公開しなかった疑い

担当:監督委

■「移民取締り(ICE)」

抗議活動中の死亡事案や遠隔国への強制送還に伴う人権侵害の疑い

担当:監督委、司法委

「対外軍事行動」

■イラン戦争、ベネズエラでの軍事行動・麻薬船攻撃・石油開発をめぐる民間企業との提携

担当:外交委

■「虚栄プロジェクト」

ホワイトハウス東棟の取り壊しと舞踏場建設、凱旋門構想、建国250周年行事の民間資金

担当:天然資源委、監督委

■「利益相反・汚職」

ジェフリーズ院内総務は、国民から「盗んだ」者の責任を問うと述べ、汚職追及を前面に出しています(PBS/AP)。民主党は暗号資産をめぐる一族の関与について、上下両院の主要委員会で調査を本格化させる構えです(Bloomberg Law)。ロイター報道では、民主党はすでに関連企業や請負業者に記録の提出を求め、召喚状の下準備を進めているとされます(Washington Examiner)。憲法の報酬条項(外国からの利益受領の禁止)違反は第1期でも弾劾条項案に盛り込まれた論点で、今回も最も立件しやすい分野の一つとみられます。

担当:というわけで各主要委員会の総動員になるでしょう

このようにリストアップすると、かなりのボリュームになることがわかります。トランプ政権は相当に行き詰まっており、とにかく憲政の基盤を揺がしたのだから、弾劾罷免が民意かもしれません。ですが、問題は、これだけのボリュームがあると、手間ひまがかかるということです。

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