トランプのあまりにも多すぎる“疑惑”の数々。米国中間選挙で民主党が上下院を制しても「大統領の罷免」が困難な理由

 

「一気の崩壊」よりも起こりやすい長期低迷という消耗戦

では、こうした悲観シナリオが主流かというと、勿論、現時点で暴落が起きていないということは、メジャーではありません。多数派の態度としては、この種の悲観シナリオがそのままの形で今後12か月以内に実現する確率は15%前後、より緩やかな20%程度の調整(弱気相場入り)にとどまる確率は30%程度という辺りが感触になっているようです。

この15%から30%の悲観論というのは、ハードランディング的なショックが起こる可能性です。そうではないとして、最も起こりやすいのは「一気の崩壊」ではなく、「AI関連銘柄の長期低迷と、ノンバンク融資の損失がじわじわ表面化する消耗戦」だという考え方もあります。

仮に、崩壊がゆっくり進むとして、このシナリオで重要なのは、個々の出来事よりも「要素の連環」になります。IPO市場、ノンバンク融資、データセンター、AI株は、すべてAIが将来大きな利益を生むという一つの前提でつながっています。

その前提が揺らいだとき、どこから崩れ始めるかを見極めるには、アンソロピックなど大型AI企業の上場動向、テスラとの合併話を含むSpaceX株の行く末。そして、プライベートクレジットの解約・デフォルト状況、更には大手テック企業の設備投資計画が急停車するかどうか、の3つを注視する必要がありそうです。

さて、ここまでの金融に関するシナリオは、多くの投資家、アナリストが言い始めていることですので、驚くには値しません。また、様々な意味で国際金融市場はこうした危機を織り込んでいるとも言えるでしょう。明るい話ではありませんが、直視すべき現実に違いはありません。

問題は、この憂鬱なストーリーが、もう一つの暗い話に重なっていくということです。それは、中間選挙によって選ばれる新議会による大統領弾劾という問題です。

現時点ではかなり濃厚になっているのですが、民主党が下院を奪還した場合、2027年1月の新議会開会後に大規模な調査が始まる可能性は高いです。その一方、弾劾訴追の票決は早くても2027年夏以降、上院での有罪評決(罷免)は現時点の政治力学では相当に困難と言われています。

11月3日の中間選挙を約1週間後に控え、各種予測は民主党の下院奪還を有力視しています。予測市場Kalshi(予測ギャンブルのアプリ)では10月16日時点で民主党の下院獲得確率が90%、上院獲得確率が63%とされています。中道的とされる、Cook Political Reportは10月9日時点で民主党の下院議席を224~234議席と見込んでいます(Action Network)。ただし上院については予測が分かれており、共和党が多数を維持するとの見方もまだまだ残っています。

ここからは、民主党が下院(場合によっては上院も)で多数派となったことを前提に(1)調査対象となりうる疑惑、(2)調査から弾劾票決までに要する時間、(3)上院共和党の動向と有罪評決の可能性、の3点を整理します。

米国憲法上の弾劾は二段階です。下院が単純過半数で弾劾条項(訴追状)を可決すると大統領は「弾劾訴追」された状態となり、上院が裁判を開いて出席議員の3分の2以上(全員出席なら67票)が有罪とした場合に罷免されます。トランプ氏は第1期に2019年(ウクライナ疑惑)と2021年(連邦議会襲撃事件)の2回訴追され、いずれも上院で無罪となりました。

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