「トランプ憎し」だけで団結する民主党が抱える深刻な分裂
調査の積み上げを優先する民主党の方針を前提にすると、下院での弾劾票決は早くても2027年夏から秋、上院の裁判を含めた決着は2027年末から2028年初めと見込まれます。新議会(第120議会)の開会は2027年1月3日で、それまでは共和党が下院を握るため、レームダック期間中に弾劾が動く余地はほぼありません。
したがって、2027年1~3月の新議会発足に伴っては、体制づくりの時期になります。委員長の就任、委員会規則と予算の採択、スタッフの増員を行います。その上で、政権幹部への召喚状が出ることになります。
次に、2027年春~夏になると、調査と公聴会が開催されます。文書請求や証人喚問が「これでもか」と重ねられるはずです。政権が召喚状に応じなければ、議会侮辱決議や裁判で争うことになり、ここが最大の時間的ボトルネックです。第1期では元大統領法律顧問への召喚状をめぐる訴訟が2年近く続いた例があります。
その上で、2027年夏~秋には、正式な弾劾調査の開始判断 証拠が整い、世論の支持が見込める段階で、本会議の決議により正式な弾劾調査に移行するかを判断します。ちなみに、2028年の大統領選挙は予備選が2028年初めに始まるため、弾劾の手続きが選挙年に食い込むほど「選挙妨害」との批判を招きやすくなります。
私が一番恐れているのは、このような「ダラダラと大統領弾劾捜査が続く」という期間に、「ダラダラと、AIバブル崩壊の懸念が先送られる」期間が重なっていくという構図です。2つの陰鬱なストーリーが進行するだけではなく、重なることで「いつでもクラッシュ」する可能性と隣り合わせになる、これが恐ろしいのです。
本当は、悪材料がどんどん出て共和党からの大量造反を誘発して、大統領を早期に弾劾もしくは辞任に追い込むシナリオが動けばいいのだと思います。その上で、比較的普通で21世紀という時代にフィットしたヴァンス政権と、民主党が格差、軍事外交、AIなどについて建設的な論戦をするようになればと思います。そうなれば、2028年の選挙も意味のあるものになるでしょう。
ですが、問題はトランプ陣営が「粘る」ということではないのだと思います。民主党はトランプ憎しというエモーションで団結し、恐らく来週の中間選挙では有利な戦いをするでしょう。ですが、その組織は「トランプ憎し」という情念で団結している「だけ」なのです。
本当にAIや物価、あるいは格差に関する政策論に進むのであれば、恐らく対トランプ氏よりも民主党の左右対立の方が激しいものとなるでしょう。そして、その党内対立を先送りするためにも、弾劾というプロセスに「専念」したいという政治的な動機がある、これが現在の民主党です。
国民が最も求めている「AI」「格差」「物価」というリアルな問題について、党内が「真っ二つに分裂」している、これが現時点での民主党です。その分裂を隠し、先送りするために「トランプ弾劾」を「やるしかない」というわけです。
もしかしたら、問題解決を減速することで危機が深刻化するということでは、この民主党の分裂という点もカウントすべきかもしれません。つまり、「AIバブル崩壊の先送り」「時間をかけたトランプ弾劾捜査」「28年大統領選を前にした民主党の党内抗争」という3つが重なって推移するということです。
これは、最も陰鬱なシナリオと言えるでしょうし、もしかしたら避ける方法はないのかもしれません。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年10月27日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。「村上龍氏との別れと感謝」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。
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