圧力をかけるターゲットを変える
『~債権回収トラの巻~ 中小企業の売掛金・債権回収』より一部抜粋
売掛金の未払いが発生して督促を始めると、ほどなく社長や経理担当者と連絡がつかなくなることがあります。いわゆる“居留守”です。
こうなってしまった相手は、資金繰りが厳しいと思って間違いありません。普通に考えると、訪問するか、急所を差押して泣きつかせるしかないのですが、どちらも手間がかかります。
こんな時、一部の金貸しは電話を駆使して、相手から連絡させるように仕向けていく裏ワザを使うことがあります。居留守を使うようになった相手に、どうやって?と、思われるでしょうね。
その裏ワザとは・・・。
圧力をかけるターゲットを変えるのです。
金貸しは、貸金業規制法で契約当事者以外の第三者へ督促することを禁じられていますから、あからさまに請求はできません。法をすり抜けて圧力をかけていきます。
標的になりやすいのは、いつも電話口にでる事務員さんや受付、または相手の家族などです。
方法は簡単で、ただ電話をするだけ。居留守を使われているとわかっていても、ともかく電話をかけます。
社長や経理担当者の在籍の有無と、戻り時間を聞いてメモします。大抵は戻りませんとか、出張中という回答になりますが、いつ頃に戻るのかを聞き出すのがポイントです。
そして、聞き込みした戻り時間に必ず電話をかけるのです。予想通り不在でも構いません。電話した時間に戻ると言った人を呼び出し、再度予定を確認するのです。あくまで冷静に聞き取りに徹しています。
これをこまめに繰り返すのです。電話した時間や、電話に出た相手、話した会話など、全てメモを忘れずに。
こうしている間に、当たり前ですが、相手の対応に矛盾が出てきますから、電話の中でそこを追求します。あくまで冷静に・・。
ここまでやると、普通の事務員や受付の女性であれば精神的に参ってしまうでしょう。
「何とかして下さい。」と、社長に泣きつくようになります。こうして、間接的に圧力をかけて電話に引きずり出しているのです。
相手の戻り時間を聞くだけで、威圧したりすることもありませんから違法とは言い切れないのです。このような方法を取ることで、訪問するよりも労力と費用を削減しているとも言えます。
ちなみに、ヤミ金ともなると、唖然とするような方法を使って回収を行ってきます。例えば、隣近所に出鱈目に電話をかけるのです。
「お宅の隣の○○さんが、私から借りたお金を返してくれないんですよ。お隣のよしみでなんとか都合してくれませんかね?」
などと意味不明なことを言います。
そもそも、契約自体が違法ですから、回収方法はどんなものでもお構いなしといった感じです。
しかし、こうなると、隣近所の人が相手の家を訪れ、この件に関して文句を言うことになります。「あなたのお金のことは私には関係ない!迷惑だからなんとかしろ!」となります。
隣の人にとっては当たり前のことですが、相手からすれば、まるでヤミ金の回収担当者のようなものです。とても居留守で凌げるようなものではないということになってしまうのです。
ヤミ金の話は例外ですが、これを中小企業に当てはめて考えてみましょう。
確かに、すぐにでも応用できる手法です。むしろ、あなたが貸金業者でない限り、相手の会社の人間に督促をかけても違法ではありません。(威圧・恐喝の類にならない程度であれば・・。)
しかし、本来責任のある経営陣以外の人を巻き込むことになります。決してむやみやたらと使っていいものではありません。
明らかに悪質な相手であればお構いなしですが、良く考えて下さい。心を鬼にして、やるかやらないかはあなた次第です。
この方法の一番のポイントは、ともかく毎日でも電話をして相手を根負けさせることにあります。
また、メモをこまめに取っていると、裁判所で法的手続きをする際に役立ちます。これだけ督促しているのに、まったく電話にも出ず誠意が見られないばかりか、倒産の危機にある可能性も高いため、緊急で差押が必要だという裏付けにするのです。
さらに、メモを取っていることで、一定の法則が導き出されることもあります。何曜日は午前中にいる可能性が高いとか、月末はいないなどということです。
これがわかれば、訪問するタイミングを決めることもできますね。
『~債権回収トラの巻~ 中小企業の売掛金・債権回収』
著者/道家健一
中小企業のための債権回収・売掛金回収メルマガ。銀行やノンバンクはどのように融資の回収や管理をしているのか? 金融機関出身者であり、「お金を回収する交渉技術」の著者、「ホンマでっか!?TV」の評論家としても出演歴のある筆者が、その手法を公開!!
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