経営者や組織を率いるリーダーにとって、業績を上げることが成功のひとつであることに疑いはありませんが、「究極の成功」となると何が上げられるのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんが、一流の経営者らのエピソードや名言を紹介しつつ考察しています。
「人の成長」こそが
“人使いの達人”松下幸之助さんは「人間は本来働きたいもの。働くことをじゃましないことが、一番うまい人の使い方である」と言い、ジャック・ウェルチは「リーダーになる前の成功とは、自分自身を成長させることである。リーダーになったならば、成功とは他人を育てることである」とリーダーのあり方を規定します。
ドラッカーは「『人こそ最大の資産である』という。マネジメントのほとんどが、あらゆる資源のうち人がもっとも活用されず、その潜在能力も開発されていないことを知っている。だが現実には、人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが、人を“資源”としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている」と実情を批判しています。
松下幸之助さんと稲盛和夫さんの創業の経緯を観ます。そこには「よくあるケース」として取り上げられもしない「卓越した人材を失ってしまう」典型的な中間管理職の対応の姿があります。よく経営者が言う「良い人材がいない」というのは大きな錯誤で、人材を発掘する“システム”“ノウハウ”を知らないがための不幸です。
松下幸之助さんが起業した経緯ですが、「いろいろ相当苦心して工夫してつくった改良ソケットを上司に見せたところ、使いものにならないと酷評されてくやしい思いをした」のがきっかけになったそうで、もしこの時、聞く耳を持った上司がいたなら「大阪電灯内」に有望な新事業部門が立ち上がっていたかもしれません。
稲盛さんが京セラを立ち上げたのも同じような経緯です。松風工業という碍子メーカーに勤めていたのですが、セラミック真空管の試作に悪戦苦闘しているさ中に、新たに着任したばかりの技術部長に「君の能力では無理だな。ほかの者にやらせるから手を引け」と引導を渡され、これが会社を辞めて起業する契機となったそうです。
この時の心境をこのように吐露しています。「私はとかく思い込むとわき目もふらず独走する。それを『彼は自由にさせた方が力を発揮するタイプ』と前任の部長は任せながら支援をしてくれた。後任は外部からきた人で『あなたこそニューセラミックスがわかるのか』と頭の血が逆流した」とその時の状況を明かにしています。
またドラッカーの言葉を引用します。
「組織には“価値観”がある。そこに働く者にも“価値観”がある。組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじむものでなければならない。同じである必要はない。だが、共存しえなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果を上がらない」
ジャック・ウェルチは「人に自信を持たせることが、わたしにできる何より重要なことだ。自信さえ持てば、人は行動を起こすからである」と。
あなたが経営者なら、達人技をマスターすることこそが力となります。「マネジメント」の本質と一体化するならば、松下幸之助さんや稲盛和夫さんのような「利他」を行いつつ、業績を上げることとなるでしょう。ここで大切なことは「腑に落ちる」ことで、それが起こったなら勇気を持って精進し努めることで後は試行錯誤して“やり通す”ことです。
リーダーになると「成功とは他人を育てることである」となります。経営者になると「リーダーをも育てることである」となります。ドラッカーは「組織が一人ひとりの人間に対して位置と役割を与えることを当然としなければならない。同時に、組織をもって自己実現と成長の機会とすることを当然のこととしなければならない」と言います。
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