世代を超えて読み継がれる名作には、それ相応の理由があるものです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師の松尾英明さんが、大人気絵本『100万回生きたねこ』が教えてくれる、生きていく上で重要な、身につけるべき考え方を紹介しています。
自分を自分のものにする
今回は、完全にエッセイ。
好きな絵本について。
国語の時間の一部を使って、1年半に渡り、毎朝の読み聞かせを続けている。最初は私が読んでいたが、今は子どもが日替わりで読んでいる。通算で300冊以上読んでいる計算になる。
本当は、私が読みたい気持ちもある。絵本の読み聞かせが好きなのである。絵本自体が好きなのである。
一番好きなのは、ご存知、佐野洋子さん作『100万回生きたねこ』である。担任したほとんどの学年で読み聞かせしてきた本である。私が生まれるより前に出た本だが、私は大人になってから読んだ。何百回読んでも、いい本である。
ねこは はじめて 自分のねこに なりました。
ここの一文が特に好きである。
自分は、本来自分のものである。飼われている状態は、自分ではない。我が子に対しても、学級の子どもに対しても、同じように思っている。
自分が、自分になれること。自分の人生にとっての主人公であるということ。学級の中において、特にここを大切にしたい。
これは、他者が他者であることを認めるということと同義である。自分のもの、所有物にしないということである。
自分が自分になるためには、他人を尊重する必要が出る。そうしないと、自己矛盾が起きる。他人を尊重しないということは、自分も同じ扱いを受けるということと同義だからである。
自分が他人に尊重されないことに文句を言う姿勢も違う。自分を最も尊重するのは、自分自身だからである。自分が認めてくれないのに、他人に認めてもらっても、満足しない。他者承認を永遠に求め続けることになる。
ねこは、白いねこに出会って、子どもが巣立って、最後に死ぬ。いつまでも幸せに生きることでなく、死を肯定的に捉えている点も、秀逸であると思う。
自分を自分のものにするということは、自ら愛する他人と共に生きるという選択肢も含む。誰にも強制されずに、「そばにいてもいいかい」と頼む場面も、素敵である。
まあ、とにかく好きなのである。前号でも書いたが「何を好きか」というのは、観が出る。周りの人に「何が好き?」というのをきくのも、大切なコミュニケーションかもしれない。
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