割増賃金という言葉をご存知ですか?人事労務関係の仕事に従事している人ならお馴染みかもしれませんが、割増賃金とは、所定の労働時間・法定労働時間を超えて労働した時間に対して支払う賃金のことです。いわゆる残業代ですね。この割増賃金の計算、基本給に加え各種手当を含めた金額を基礎として計算をしますが、意外とその手当が勝手に除外されている場合も多いんだそうです。そこで今回、現役社労士の飯田弘和さんが自らの著書である無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の中で、割増賃金について詳しくご紹介。賃金計算の基礎から除外できる7項目を詳しく説明しています。
御社では、割増賃金の単価計算、正しく行っていますか?
「○○手当は、残業等の割増賃金の計算に含めますか?」といったご質問を受けます。
残業代等の割増賃金の単価を出すときは、基本給だけでなく、各種手当等も含めた金額をベースに残業単価を計算します。役職手当や業務手当等が支給されていれば、これらの手当も含め、残業単価を割り出します。ただし、割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外できるものがあります。以下の7つです。それ以外のものは除外できません。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
この7つのものについては、割増賃金を計算する際に、計算の基礎に含めなくてもOKです。
ちなみに、「1.家族手当」とは、扶養家族数等を基礎として算出した手当のことをいいます。したがって、扶養家族の数に関係なく一律に支給するようなものは、たとえ名称が家族手当であったとしても、割増賃金の計算の基礎に含めます。
「2.通勤手当」とは、通勤距離や実際の運賃に応じて算出される手当をいいます。したがって、通勤距離に関係なく一律に支給するようなものは、たとえ名称が通勤手当であっても、割増賃金の計算の基礎に含めます。
「6.臨時に支払われた賃金」とは、「臨時的・突発的な理由で支払われたもの」と「結婚手当のように、支給要件はあらかじめ決まっているが、支給事由の発生が不確定であり、その上、非常に稀に発生するもの」をいいます。結婚手当、出産手当、大入り袋などが当てはまります。
「7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」としては、賞与(ボーナス)が代表的なものです。ちなみに、「定期的に支給され、且つその支給額が確定しているもの」は賞与とはみなされません。したがって、このようなものは、たとえ賞与という名称であっても、割増賃金の計算の基礎に含めます。
また、賞与に準ずるものとして、以下の3つについては割増賃金の計算の基礎から除外できます。
ア.1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
イ.1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
ウ.1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算出される奨励加給または能率手当
「6.臨時に支払われた賃金」や「7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」について、実際には該当しないものを、勝手な解釈によって計算の基礎から除外している会社が見られます。これは、本来支給すべき割増賃金よりも低い割増賃金で支払っていることになります。正規の計算額との差額について、未払い賃金(未払い残業代)が発生していることになります。たとえ故意ではなく過失(ミス)であったとしても、違法は違法です。
もし、間違った計算方法によって、残業代を少なく支給している会社がありましたら、すぐに是正してください。各種手当それぞれについて、その手当を残業代の計算の基礎に含めるかどうか分からないときは、社労士等の専門家に確認する、それが面倒であれば、とりあえず計算の基礎に含めておくと良いでしょう(本来含めなくても良いものを含めて計算することによって残業代単価が法で定める金額よりも高くなることは、法的にはまったく問題ありません)。
以上を踏まえて、改めてお聞きします。「御社では、割増賃金の単価計算、正しく行っていますか?」
※表記に間違いがあり、本文の一部を訂正しました。(2020年01月29日)
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