プーチンを弱体化したいだけ。いつまでもウクライナ戦争を終らせる気がない米英の魂胆

2023.03.09
kk20230308
 

東部地域にロシア軍の猛攻を受けるも、徹底抗戦の構えを崩すことのないゼレンスキー大統領。そんなウクライナに対してこれまで大量の兵器を供与してきた欧米諸国ですが、未だ停戦の見通しすら立っていないのが現状です。このような状況を「米英2国の意図によるもの」とするのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんは今回、米英がウクライナ戦争を長引かせたい理由を解説した上で、彼らがこの戦争を停戦させる理由など何ひとつないと断言しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

ウクライナへの支援は“戦争を長引かせる”ため。米国が本気で狙う「プーチン弱体化」

ロシアとウクライナの本格的戦争が始まってから1年が経った。しかし、停戦への兆しがまったくみえていない。ロシアは、「特別軍事作戦を継続している」と表明し、最前線への攻勢を強めている。一方のウクライナは、ロシアに対する徹底抗戦の決意をあらためて示した。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、国内外のメディアに対して「ウクライナのパートナーが約束を果たし、われわれ全員が課題を実行すれば勝利は必然だ」と述べ、欧米各国に戦闘機などさらなる兵器の供与を呼びかけた。

欧米各国は、対戦車ミサイル「ジャベリン」、トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」、地対空ミサイル「スティンガー」など、さまざまな兵器類、弾薬類を、支援のためウクライナに送り続けて支援を続けてきた。

特に、北大西洋条約機構(NATO)の「3大戦車」とも称される、英「チャレンジャー2」、独「レオパルト2」、米「M1エイブラムス」の投入が注目されている。これは、ロシア軍がウクライナに多数投入している戦車に、大きな威力を発揮すると期待されているからだ。

だが、戦車の投入だけでは、戦局を変えるのは難しいだろう。例えば、英国は数週間以内にチャレンジャー2を14台、ウクライナに提供すると発表している。だが、14台は1個中隊規模にあたり、その展開する範囲は数百メートル程度に限られるという。

一方、ロシア軍は数個師団の規模で、数十から数百キロの範囲で作戦を展開している。つまり、米英独などの支援は、ゼレンスキー大統領が戦争の目的とする「領土回復と人々の解放」を達成させるほどの規模ではない。むしろ、より戦況を膠着させてしまうものだ。

総兵力の5割以上が失われ壊滅状態のウクライナ正規軍

また、ウクライナの正規軍が壊滅状態にあるという。ウクライナ戦争の開戦時、ウクライナ正規軍は約15万人、予備役が約90万人だったという。しかし、2023年1月初めの時点で、総計55.7万人が死傷したという報道がある。総兵力の5割強が失われた。

ウクライナ軍は、45歳以上の老兵や徴兵年齢に満たない15、16歳の少年兵まで前線に投入しているようだ。その苦境を補うために、ウクライナの戦場で実際に戦っているのは、米英仏、ポーランド、ルーマニアなど東欧諸国などからの約10万人とされる個人契約、義勇兵などである。

そもそも、NATOが供与したHIMARS、ジャベリンなどのハイテク兵器をウクライナ軍は使うことができない。NATO諸国からの将校や下士官がシステムを操作しながら戦闘を行ってきたのだ。

要するに、外国の武器で、外国の兵士が戦っているのがウクライナの現実なのである。

欧米諸国がしていることは、瀕死の重傷患者に大量の輸血をして、体中の血液が入れ替わっても延命させようとしているのと同じにみえる。つまり、ウクライナが失った領土を回復させて、戦争を終結させるために支援しているのではない。むしろ、戦争を延々と継続させるために、中途半端に関与しているのではないだろうか。

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