パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスの突然の一斉攻撃に対して、激しい報復を開始したイスラエル。イスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻も秒読みと見られますが、この先、事態の好転は望めないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、この「衝突」に各国が見せた反応を詳しく紹介。さらに仲介役の適任としてトルコの名を挙げ、その理由を解説しています。
武装組織ハマスがイスラエル奇襲攻撃で報復攻撃の応酬に。紛争が連鎖する中、仲介・調停を担う”ある国”の名前
10月7日、ユダヤ教の安息日に当たるこの日。パレスチナの武装組織ハマスによる大規模な同時攻撃がイスラエルに対して仕掛けられました。
ハマスの主張によると5,000発のミサイルとロケット弾がイスラエルに打ち込まれ、イスラエル側に大きなダメージを与えたようです。
その後、ハマスはガザ地区に面するイスラエルの都市からイスラエル人住民のみならず、外国人を連れ去り、情報では100名から200名に上る人質を取っていると言われています。
ここ2年程、イスラエルはレバノンに基点を置くヒズボラとの戦いに集中し、ハマスおよびパレスチナとの紛争を避けたいとの思惑から、ガザ地区への経済支援などを行ってきたため、対パレスチナフロントは落ち着いているのではないかと思い込んでおりましたが、今回、強固なイスラエル軍による防御壁と世界最高と目される情報機関モサドの隙を突いて、ハマスが一斉攻撃を仕掛けたと思われます。
エジプト政府および情報機関からハマスによる攻撃の可能性についての情報が入っておりましたが、いろいろな状況に鑑みて、その心配はないのではないかと考えていたため、ハマスが一斉攻撃をイスラエルに対して実行したとの一報が入った際には愕然と致しました。
当然ながらイスラエル政府とイスラエル軍はパレスチナおよびハマスに対して報復攻撃を加えることになりますが、イスラエル軍とハマスの交戦が続く中、両国における犠牲者の数はうなぎ上りに増えています。
すでにハマスもイスラエル政府も掲げた拳を下げるきっかけを失っており、極右政党と連立を組むネタニエフ首相も本格的な地上部隊投入を決断する一歩手前にまで来ており、戦闘はエスカレーションの様相を呈しています。
世界はコロナのパンデミック、そしてロシアによるウクライナ侵攻を受けてすでに重篤なまでに分裂していますが、今回のイスラエルとハマスの一件でも、対応は完全に二分されています。
米英独仏伊の5か国は7日には共同でハマス非難とイスラエル擁護の声明を出し、8日に開催された国連安保理緊急会合でもハマス非難をしていますが、中ロは本件からは少し距離を置く姿勢を見せ、「これ以上戦闘がエスカレートし、民間人の被害の拡大が起こらないことを望み、両国に自制を促す」という発言に止め、イスラエル・ハマスへの非難は避けるというポジショニングをしています。
中ロの場合、最近、イスラエルともアラブ諸国とも経済的なつながりや戦略的パートナーシップが強固になってきていることもあり、紛争の本格化と長期化によって経済的にネガティブな影響を懸念する半面、現時点でサイドを取ることによって、せっかく築いた“良い立ち位置”を失いたくないという戦略的な選択が透けて見えます。
米英独仏伊の欧米各国については、イスラエルへの軍事的な支援に対しては温度差はあるものの、総じて前向きであると思われ、アメリカについては原子力空母攻撃群を東地中海に派遣するという“抑止行動”に出ています。これが、今後、どのように跳ねるかは少し懸念するところです。
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