習近平「デジタル監視力」とプーチン「秘密工作」の絶妙なコンビネーション。中露が混乱極まる国際社会で推し進める“裏工作”の標的は?

Hangzhou,,China,-,Sept.,4.,2016,-,Chinese,President,Xi
 

混迷を極める国際社会にあって、その関係をますます深めつつある中国とロシア。そんな両国が「一致する思惑」実現のため、互いの強みを融合させた裏工作を推し進めていることは疑いようのない事実のようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、中ロによる「見事な連携」の全貌を紹介。さらに現在同時に進行する2つの戦争の早期解決を困難にしている背景を解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:戦争・紛争の連鎖の危険性と国際情勢のメインプレイヤーたちの思惑

紛争の背後に透ける中ロの思惑。習近平とプーチンが進める「裏工作」に翻弄される世界

「ウクライナ戦争においてロシアの敗北を見たくない」

これは中国の王毅外相が訪欧時にEUのカラス外交安全保障上級代表との会談で語ったと言われている内容です(CNNやBBCのみならず、新華社でも同様の内容が報じられました)。

「この戦争でロシアが敗れ去るようなことになれば、アメリカの攻撃の矛先はすぐに中国に向けられることになる。アメリカは恐らく台湾情勢を理由にして中国に工作を仕掛け、中国が自衛のために反応せざるを得ない状況を作り出してくるだろう。もちろん中国は自国の安全保障のために受けて立つし、そうなればアジアにおいてアメリカの居場所がなくなることになるだろう」

自信と懸念、そしてアメリカに対する牽制がにじむ王毅外相の言葉と捉えていますが、「中国が自国中心の覇権体制を築き、アメリカと肩を並べて世界情勢をリードしていくという目標の達成に際し、反欧米陣営における唯一のパートナーとしてのロシアに没落してもらっては困る」というのが本音だと考えます。

これまでロシア・ウクライナ戦争に関し、対ロシアの軍事支援を表向きは行っていないと主張する中国ですが、ウクライナにおけるロシアの戦いを支え、ウクライナを盾に勢力を拡大しようとする欧米諸国の企てを挫くために、あらゆる手段を用いてロシアを支えつづけているのは事実です。

しかし、ロシアが早期にウクライナに勝利してしまうのもまた、中国にとって必ずしも喜ばしい事態ではないと考えられます。

ウクライナでの戦争が終わってしまうと、やはりアメリカの攻撃の矛先は確実に中国に向けられることは明らかであり、勝ち切ったロシアが果たしてどこまで中国の言うことを聞いてくれるかは未知数になってしまうと考えられます。

そのような中国が今、混乱極まる国際社会において推し進めているのが、ロシアと共同で行う裏工作です。

ロシアが得意とし、今でも活発に行われていると考えられる政治工作と秘密工作に、中国が築き上げてきた世界随一のデジタル監視力を併せて、地政学上、今後の国際情勢のカギを握る中東欧や旧ソ連圏の中央アジア諸国などで影響力を拡大し、各国における強権勢力を勢いづかせて欧米型民主主義を弱めようという試みが行われています。

中ロでその手法に異なりは見られるものの、これまでのところ、見事なまでに連携して、その狙いは着実に浸透していっているようです。

そのような時に7月17日以降、ウクライナ国内で進められているゼレンスキー大統領への権力・権限集中の動きと反汚職機関への弾圧・強制捜査は、キーウ市長や与党の議員からも強い反発と拒絶反応を引き起こしており、ゼレンスキー体制に反対する市民グループなどの運動と合わさって国内における反ゼレンスキーの波が強まり、国内的に不安定な状況を作り出しているという分析が出てきました。

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