習近平「デジタル監視力」とプーチン「秘密工作」の絶妙なコンビネーション。中露が混乱極まる国際社会で推し進める“裏工作”の標的は?

 

イスラエルの姿勢に苛立ちを隠せないトランプ

アメリカによる核施設への攻撃と、イスラエルによる執拗なイラン攻撃を受けて、イランの防空システムおよび攻撃力は現在、低下していると見ていますが、とはいえ、まだ死んではおらず、アメリカのバンカーバスターによる攻撃を受けても、濃縮ウランのほとんどが無傷のまま別の施設に保管されていると言われているため、イランは今後も強力な軍事大国であり続け(潜在的核保有国)、イスラエルにとっては脅威として存在することになりますが、イスラエルとイランの軍事的な緊張に今後、トルコによる攻撃・防衛力が加わることで(どちらかというとイラン寄りの形で)、イスラエルにとっては脅威が増すことを意味することになります。

それもあってか、トランプ大統領から再三、これ以上、戦火を拡大すべきではないと釘を刺されているにもかかわらず、イスラエル周辺地域の反イスラエル勢力を根絶やしにしようと、ネタニエフ首相はガザに対する執拗な攻撃の手を緩めず、ついには人道支援物資を配布していた施設にまで空爆を加えて多数の一般市民の犠牲を出し、ヨルダン川西岸地域にも軍を差し向けてユダヤ人入植地の拡大のための対パレスチナ人迫害を強化しています。

さらには、新生シリアの国内での部族対立に便乗して、シリアの首都ダマスカスの政府系施設やモスクなどに対する空爆を強行し、これまでに数百名の死者を出しています(国内紛争とイスラエルによる空爆で、少なくとも合計900名の死者が出た模様)。

アメリカ政府の仲介の下(実際にはカタール政府が仲介を実施)、ガザについては60日間の戦闘停止に合意し、イスラエル政府とハマスとの間で人質の交換やイスラエル軍のガザからの撤退範囲などについて議論が行われていますが、それと並行して攻撃の手を緩めないイスラエルの姿勢には、何とか外交的な手段でことを収めたい(そして自らの成果としたい)トランプ大統領がかなり苛立っていると言われています。

またシリアに対しては、こちらもアメリカ政府の仲介によりシャリア暫定大統領とネタニエフ首相との間で停戦合意が成立していますが、相互に対する非難が止まず、これまで停戦しては、何らかのケチをつけて攻撃を正当化してきたネタニエフ首相の姿勢に鑑みて、いつ停戦が破棄されて、再び戦闘が始まるか読めない状況です。

ガザに対する苛烈な攻撃と、シリア内乱への強引な介入を行うイスラエルに対しては、欧州各国はEU27カ国と英国を併せて28か国が連名で激しい非難を行い、かつトルコ政府もイスラエルへの非難を強めるなど、イスラエルの孤立と国際社会の反イスラエル網が強化されてきており、さすがのトランプ大統領も庇いきれなくなってきているようです。

それゆえでしょうか?7月23日に開催された国連安全保障理事会の会合でアメリカのシェイ臨時代理国連大使は、2月にトランプ大統領が発言し、4月にはネタニエフ首相が実施を要請していた“ガザ市民の周辺国への移住”について「アメリカ政府はガザ市民の強制移住を求めることはなく、移住はあくまでも自主的に行われるものである。そしてガザ市民の移住先を探し、それを手助けするのはイスラエル政府の責任で行われるべき」と、イスラエルを突き放す発言を行いました。

2023年10月7日のハマスのテロ行為について非難し、それ以降、イスラエルがとった“自衛的な攻撃”に対しては庇う様子を見せたものの、国際的な非難と反イスラエル包囲網の拡大、そしてトランプ大統領の要請をスルーし続けるネタニエフ首相とイスラエル政府の態度を受けて、じわりじわりとイスラエルから距離を置く姿勢を示しているように見えます。

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