北・中・ロ接近で揺らぐ朝鮮半島外交。金正恩の新たな「戦略国家」構想とは?

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ロシア・ウクライナ戦争の勃発は、国際秩序を揺るがすだけでなく、朝鮮半島の外交地形にも大きな変化をもたらしました。そんな国際環境の中においての北朝鮮の動向に注目しているのは、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者です。北朝鮮はいったいどこに向かおうとしているのでしょうか?

北・中・ロ密着で朝鮮半島の外交地形が揺れる

2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争は国際安全保障のバランスをとり、朝鮮半島にも深刻な影響を与えた。北朝鮮外務省は、ロシアの「特別軍事作戦」に対する国際社会の反応、各国の立場、北朝鮮の立場表明に対する提案などを報告するよう指示を海外大使館に渡した。当初ロシアを支持したキューバの場合、国際社会が対ロシア制裁や糾弾などに合勢すると「紛争の平和的解決を支持する」と立場を変えた。

私は当時、ロ・ウクラ戦争に対するキューバの変化に基づいて「北朝鮮が中立的立場を取るのが良いようだ」と報告した(このときはまだ北の人)。キューバは国際的支持・連帯に基づいて米国の制裁から抜け出す戦術を駆使している。西側と対峙する国は同情勢力がより多くなければならない。核開発のため孤立に直面した北朝鮮は、どのような論理を展開しても多数の支持と同定を受けにくい。

2006年、北朝鮮が1次核実験をするとフィデル・カストロは金正日に「帝国主義に反対する貧しい第3世界の国々の闘争に被害を与えることになる」という書簡を送った。金正日は怒り、両国関係は冷却の流れに入った。

ロ・ウクラ戦争に対して中立を守らなければならないという提案をほぼすべての大使館(各国にある北の大使館の意)が上げた。しかし戦争開始4日後に北朝鮮外務省はロシアを支持する談話を出した。私を含め、北朝鮮外交官は驚いて失望した。北朝鮮の孤立がさらに激しくなれば、活動立地がさらに狭くなることを懸念したからだ。北朝鮮はウクライナを「キーウ政権」に格下げしたのに続き、「傀儡国家」「ゼレンスキー一味」と非難した。金正恩の訪露、プーチンの訪朝、同盟条約締結が続き、北朝鮮の派兵が波紋を引き起こした。

この密着で北朝鮮は国連安保理常任理事国、原油大国、軍事大国ロシアという強固な背景を得た。核・ミサイル活動に対する制約も解けた。ミサイル試験を乱発しても国連安保理次元の追加制裁、糾弾などが不可能だ。ロシアが国際社会とともに設け、推進した対北朝鮮制裁はロシアによって無力化された。原油・食糧など北朝鮮が必要な物資もロシアが支援している。行き詰まった人的・物的交流も活発だ。1年に駆逐艦を2隻建造して浮かべ、早期警戒機・ドローンなど即実戦で使える戦力を固めている。

自信に満ちあふれた金正恩は、戦々恐々としていた「体制の守護者」という水準を越え、戦略国家の地位を狙っている。変化した環境が変化した地位を生み出すという論拠で国際社会に要求を突きつけた。トランプ米大統領との対話には「核保有国の承認」という受け入れ不可能な条件を付けた。韓国には「二国家論」を強要し、再び非難戦を展開した。ロシアと密着して実利を得なければならない時点で、米朝・南北関係の改善には興味がないと判断したのである。

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