中国の自動車市場で飛び交っているという「30分で予約1万件」や「1時間で2万件」といった数字は、果たして本当なのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、中国自動車業界の「裏ルール」について詳細を明かしています。
年間販売の2倍「メーカー発表の予約件数は信用できない」中国
「30分で予約1万件突破」「1時間で2万件突破」。今の中国の自動車市場では、こうした数字はもはや見慣れた光景になっている。
長安阿維塔(AVATR)の元幹部はSNSで、「2025年の今までで、中国の乗用車予約件数はすでに5000万台を突破したらしい(笑)」と投稿した。
中国の年間乗用車新車販売は2500万台程度、年半ばの予約件数がその倍というのはあまりにも異常であり、多かれ少なかれ水増しがあることは明白。
最近では長安マツダEZ-60が予約4万件を謳い、ファーウェイ鴻蒙智行(HIMA)も毎日のように傘下モデルの予約件数を発信。
一方で蔚来(NIO)は、予約件数の発表を取りやめている。何が起きているのか。
偽りの予約◯万件
自動車系ブロガーの呉佩氏も、業呉の“裏ルール”を暴露している。
彼によれば、広告代理店は発表会の数ヶ月前から「予約◯万件突破」演出を仕込んでおくという。
目的は二つ、ひとつは消費者に「爆売れだ」と思わせるため、もうひとつはそのメーカーの上層部を喜ばせるためだ。
「だが“旧暦1日”は逃げられても“旧暦15日(=満月)”は逃れられない。つまり、発表直後は勢いを演出できても、数ヶ月後に納車が始まればすぐ化けの皮が剥がれる。
結局は“誰がパンツをはいていなかったか”が明らかになる。数ヶ月後に通常販売期に入れば、隠しようがない」と看破する。
200円から仮予約
中国では、特に新エネルギー車(NEV)は、スマホアプリから数十元、数百元から予約することが可能だ。
EZ-60の場合はわずか10元。しかもこれらはいつでもキャンセルが可能だ。
「数分で1万件突破」というのはほぼこのパターンで、後に大量にキャンセルされていると思われる。
例外は唯一シャオミ
中国では唯一例外的にシャオミが爆発的な受注をしており、シャオミが発表する数値だけはキャンセル不可の本契約件数。
他社はこれに触発され、キャンセル可の簡易予約件数を競い合っている、というのが実態なのかもしれない。
あるメーカーでは発表会直後に、社員や友人、取引先まで動員して“形だけの簡易予約”を入れるのも日常茶飯事だという。
数字の信頼性喪失
中国自動車工業協会によると、2023~2025年の間に80%以上のNEVブランドが簡易予約プレセールス方式を採用している。
市場競争が激化する中で、発表直後の予約件数をめぐる暗闘が過熱している。
当初は、プレセールス台数の公開が製品競争力を示す“筋肉アピール”だった。しかし、これが業界標準になると、データの意味が歪み、マーケティング色が濃くなりすぎた。
今では、その数字自体が信頼性を失っている。
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