2019年の「7pay」不正利用事件は、セブン&アイ・ホールディングスのデジタル戦略を大きく揺るがした出来事でした。しかし、その危機は思わぬ形で新たな提携を生み出す契機にもなったようです。今回発表されたPayPay、ソフトバンク、LINEヤフーとの資本・業務提携は、日本のキャッシュレス市場にどのような変化をもたらすのでしょうか。また、その一方で期待される海外展開には、乗り越えるべき課題も見えてきます。。『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でスマホ/ケータイジャーナリストの石川温さんが、提携の背景と狙い、そして今後の展望について考察しています。
PayPayとソフトバンクがセブン&アイと資本提携契約を締結–7pay不正利用事件が発端で距離が縮まったPayPayとセブンの関係
PayPayはソフトバンクおよびLINEヤフーとともにセブン&アイ・ホールディングスおよびセブン-イレブン・ジャパンとの間で業務提携契約を締結。さらに、PayPayとソフトバンクがセブン&アイとの間で資本提携契約を締結したと2026年7月31日に発表した。
これにより、セブン&アイの共通会員基盤である7iDはPayPay IDに統合され、セブンマイルに代わってPayPayポイントが導入されるという。
また、アプリ・デジタル顧客接点が連携され、販促・送客施策の拡充が図られるとしている。
セブン&アイ・ホールディングスにおいては、2019年7月に起きた「7pay」による不正アクセス、乗っ取り事件が転落のはじまりであった。
サービス開始直後から不正アクセス、乗っ取りが行われ、謝罪会見で社長が2段階認証を知らなかったことで地に落ちた。その後、7iDはガチガチのセキュリティとなり、相当、使いにくいものになった。結果、自分もIDやパスワードがよくわからなくなり、二度と使うことのないサービスになってしまった。
確か、この騒動の直後にセブン&アイ・ホールディングスとソフトバンクの間で人が動き、両社の間の距離が一気に縮まった。セブン-イレブンのアプリでPayPayがすぐに起動できるようになったのも、その成果と言われているほどだ。
PayPayとセブン-イレブンでの顧客接点や送客が強化されることで、国内ナンバーワンのスマホ決済プラットフォームとしてさらに成長が期待できそうだ。
ただ、PayPayはアメリカでの事業展開を今後の成長戦略として掲げているが、「本気なのか」と正直言って首をかしげたくなっている。
そもそも、PayPayが国内で圧倒的なナンバーワンになったのは、サービス開始時にソフトバンクやヤフーなどの営業が、地を這いずり回り、どぶ板で、加盟店を開拓しまくったからという、まさに汗をかき、アナログ的な手法で広めていったというのが大きい。一方で、ユーザーに対しては大盤振る舞いなキャンペーンが功を奏した。
PayPayはVisaと提携し、アメリカに進出するとしているが、VISAが日本でソフトバンクが展開したようなどぶ板営業をやるとはとても思えない。PayPayが日本で強かった営業力をアメリカで発揮できるのはかなり不透明だ。
また、今回のセブン&アイ・ホールディングスとの提携で、アメリカでのコンビニ事業を強化させるとしている。実際、アメリカのセブン-イレブンも日本のセブン&アイ・ホールディングスの傘下だが、アメリカのセブン-イレブンは日本のコンビニとは似て非なるもので、単なる「ガソリンスタンドの併設店」の域を脱していない感が強い。
日本のセブン-イレブンは加盟店のオーナーが本部に対して従順だからこそ、店舗のクオリティがどこも高い。日本人オーナーの勤勉さに日本のセブン-イレブンは支えられている。
一方、アメリカのセブン-イレブンは、そこまで本部の影響力が強いとは思えない。
その点、台湾などアジア圏にあるローソンやファミリーマートのほうが、日本のコンビニにとても近い。
PayPayとセブン&アイ・ホールディングスのタッグは日本市場においては最強の組み合わせに見えるが、アメリカ事業においては、かなり眉唾なんじゃないか、という気がしてならないのだ。
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