80歳の居住者に「建て替え」を提案…高齢マンションが抱える再生問題

shutterstock_319866845
 

大規模な改修などを行い、不動産としての価値を保ち続けようという「マンションの再生」ですが、そこには大きな壁が立ちはだかっているといいます。メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の廣田信子さんは、住民のコミュニティがマンションの将来のカギを握っていると指摘しています。

コミュニティなくして再生は不可能?

こんにちは! 廣田信子です。

建物の高経年化、居住者の高齢化が進んだマンションをただ維持管理するだけなく、今の時代の基準やニーズを満たすようにバリューアップすることで市場での価値を維持して長く使っていこう…。

マンションの再生長寿命化とは、ざっくり言うとこういうことです。

新耐震基準で、ハートビル法以後建てられたバリアフリー対応のもので、早くから価値を維持するための戦略をもって取り組んでいるマンションは長く住居としての価値を持ち続けられると思います。

問題は…通常の維持管理は何とかやってきたが、バリューアップまではとても手が回らない…高齢化が進行し、全体に活気がなくなり、市場価格もかなり下がってきている…亡くなる方も多くなり、それによる空室も増えている。

そういう状況になっているマンションをどう再生していくか…です。

長寿命化を図り、魅力的なマンションに再生して市場での価値を維持しいこう、というのは簡単ですが、その合意形成は簡単なことではありません

80歳の一人暮らしの人に対して、「30年後を考えたら今手を打つことが重要なんだ。まとまった金額の費用負担が生じても、場合によっては一時仮住まいが必要でも、耐震性が確保され、若い人にも魅力的なマンションに今再生させるべきで、それが資産価値を上げることになるんだ」と力説しても、賛同を得られにくいのは当然だと思います。自分が80歳の当事者でも反対しそうです。

多額の費用負担を伴い、長期の仮住まいが必要な「建替え」について、4/5の賛同を得るのは難しいのだったら「再生」でいくしかないんだ…ということになっても、大きな変更を伴う「再生」には、3/4の賛成が必要で、この3/4を確保することすら至難の業なのです。

先週、マンションの再生を支援している専門家と話をしました。合意形成の苦労話を語っていた彼が、ポロッと「結局、コミュニティしかないんですよ。最後、3/4の賛成が確保できるかどうかは…」…と。

何だか、私のいつものセリフみたいですが…私が誘導したわけでは決してなく、こぼれるようにポロッと出たことばです。それだけ、管理組合と接していて感じる実感なんだと思います。

住んでいる人たちの仲間意識なくして、高齢化が進んだマンションの再生に向けての合意形成は考えにくい…私も同じ思いです。

自分だって、超高齢になって周りとの付き合いも薄かったら、きっと今の生活を変えたくない、今のままで十分と思う気がします。今後の介護や病気にどれだけお金がかかるか読めないのにまとまったお金を支出したくないわ~、しかも一時的に引っ越さなくちゃならないなんて、絶対にいやだわ~と思い、「反対」というでしょう。どちらにしていいか分からなくて、意思表示をしないことも考えられます。

print
いま読まれてます

  • 80歳の居住者に「建て替え」を提案…高齢マンションが抱える再生問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け