もしかして我が家にも? 貴重な古文書が一般家庭に眠っているケースとは?

神戸大学神戸大学
 

昨年12月に、神戸の一般市民の家から信長、秀吉などの新出原文書がまとまって発見されるというニュースがありました。遠いご先祖様の記録が記された貴重な資料が、実はあなたのお宅にひっそりと残されている可能性もあるかもしれません。 家系図作りの達人として知られる、無料メルマガ『自分のルーツ(祖先)を1000年たどる技術』の著者・丸山学さんが語る、いま古文書の多くが瀕しているという“危機”とは?

行政機関にない古文書は個人で所蔵のケースが大半

地方に行くと人間関係の濃さを肌で感じますね。

今回も、目的のお寺に約束の時間よりも早く着いてしまったので、仕方なく道端で本を読んで時間をつぶしていました。そこへ自転車で地元の方が通りかかり、私を見るとすぐに自転車を止めました。

不審者だと思われると困りますので、すぐに「○○寺さんに用事がありまして……」と言うと、笑顔で「そうですか」と答えてくださりました。

地方では地域以外の人を見ると、すぐに分かるのですね。都会と違い全員が顔見知りなのでしょう。これは防犯上、非常にいい事ですね。誰が紛れ込んでも分からない都会というのは、かなり恐ろしいところです。今日の本題も、家系調査と人間関係についてです。

今回はまず依頼人の方の旧菩提寺にうかがいまして、色々とご協力をいただき、200年分程度のご先祖様が明確になりました。しかし、問題はそこから先です。『400年たどるコース』ですから、江戸時代の前期までさかのぼる事が目標です。

江戸時代をたどるためには、どうしてもその地域に残る古文書(宗門人別帳など)が必要になります。そうしたものが、図書館等の行政機関に寄贈されていれば話は簡単なのですが(いえ、正確にはそうした場合でも必ずしも閲覧できる訳ではありませんので色々と努力は必要ですが……)、実際のところ、寄贈されていないケースも多くあります。今回も行政機関は確認したのですが、その村の古文書は一切寄贈されていませんでした。

では、こういう場合はお手上げでしょうか?

いえ、そういう場合には地域のどこかの家が個人で所有しているという事が大半です。つまり、どこにあるかは分からないけれど、大概どこか一般のお宅に古文書は現存しているものです。それを突き止めるのも、ご先祖様探しでは大事な作業になります。

そんな時にものを言うのが、前述のとおりの地方ならではの濃い人間関係です。

色々と差し障りがあるといけませんので詳細は書けませんが、今回もその地域の中で次々に古文書がありそうな家を紹介していっていただきました。(イメージとしてはWeb上のSNSのような感じでした)

そして、あるお宅に事情を告げてお邪魔させていただきましたところ、ありました!

こういう場合、大体、埃をかぶったダンボールに古文書がいっぱいに詰められて代々引き継がれています。ですから、現在そのダンボールを引き継いでいる当主の方は、その中身が何なのかをよく知らないケースもあります。

今回もそのお宅で見た光景は、まさにそれでした。その地域の貴重な古文書が、大量に眠っていたのです。もう捨てようかとも考えていたそうです(……危なかった!)。

大量にありそうですし、突然の訪問ですから失礼があってはいけませんので、その日はいったん辞しまして、改めて閲覧のお願いを正式に手紙でさせていただく事にしました。今回のその古文書で江戸初期までたどれるのか現段階では不明ですが、大きな進展のあった現地調査になりました。

歴史学者の網野善彦氏の著作『古文書返却の旅』(中公新書)によれば、日本では今もなお、無尽蔵ともいえる古文書が未発見・未調査のまま眠っているそうです。旧家の古い襖、屏風などの裏には、確実に文書が張られているとも同書で書かれています。

現在、古い戸籍がどんどん処分されていて、家系図作成を行うためのご先祖様探しをしている方にとっては受難ですが、戸籍だけでなく古文書の多くもその危機に立たされています。

ご先祖様探しだけは、「定年後ゆっくり」という訳にはいきません。今日もどこかで、貴重な古文書が焼却されている事でしょう。

『自分のルーツ(祖先)を1000年たどる技術』より一部抜粋

著者/丸山学
丸山行政書士事務所代表。相続手続き、会社設立などの行政書士業務を行う傍ら、依頼者の家系図を作成するサービスにも積極的に取り組み、家系図作りのエキスパートとしてテレビ・ラジオ・雑誌等のマスコミ出演も多数。まぐまぐ!からは、無料メルマガ『自分のルーツ(祖先)を1000年たどる技術』を配信中。
≪最新記事を読む≫

image by:神戸大学

print
いま読まれてます

  • もしかして我が家にも? 貴重な古文書が一般家庭に眠っているケースとは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け