日韓と印パ、急速な「歩み寄り」に米国の影。発火するアジアの危機

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2015年12月25日、インドとパキスタンの両首相が12年ぶりに対話を再開しました。また、同月28日には日韓の外相が「慰安婦問題」の合意を発表しています。なぜ今、この時期に印パ、日韓は歩み寄りはじめたのでしょうか? 『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、これらの動きに大国・アメリカが深く関わっていると指摘。中東や東アジアなどを中心に、世界があと数年以内に「有事」を含む「大きな転機」を迎えると警告しています。

印パと日韓、急速な「歩み寄り」に米国の影

 今週は、インドの首相がおよそ12年ぶりにパキスタンに電撃訪問したことと、日韓慰安婦問題合意につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

BBCによりますと、インドのモディ首相は12月25日、パキスタンを予告なしで訪れ同国のシャリフ首相と会談しました。インド首相によるパキスタン訪問は、およそ12年ぶりとなります。

今回の訪問は、モディ首相がシャリフ首相に誕生日のお祝い電話をしたことがきっかけとなり、モディ首相が訪問先のアフガニスタンからインド・ニューデリーに向かう途中で、シャリフ首相の実家があるパキスタン東部ラホール空港に急遽立ち寄り、空港でシャリフ首相自らの出迎えを受けることになった「歴史的な誕生日」と報じられています。

その後、両者はラホール近郊のレイウィンドにあるシャリフ家の邸宅で2時間ほど会談し、対話の再開や両国の民間交流の促進について話し合ったと言われています。

パキスタン外務省は声明で、「双方のリーダーは両国の人々の利益に資するため、対話のプロセスを続けていく意向を示した」と発表。2国間の接触を継続し、これを強化していくことで合意したと述べています。

また、モディ首相はツイッターで「シャリフ家の自宅で温かい夕べを過ごした」と書き、シャリフ首相が空港まで迎えに来てくれたことに「感動した」とも書き込んでいます。

現地メディアは異例の誕生日外交だなどと大きく伝えていますが、日本のNHKをはじめ、世界中の報道機関は混乱が続くアフガニスタンの安定に向けて両国が協調するよう、現地に部隊を駐留させているアメリカから強く促されていることが要因だと冷静に事案を分析しています。

現在アメリカは、アフガニスタンから完全撤退すること(特に予算面から)を表明していますが、その速度は減速中です。

それにあわせて、まだまだ混乱が続くアフガニスタンの安定のための戦力をアウトソーシングする必要もあります。

その任務をインドとパキスタンに追わせるため両国の緊張関係を早々に雪解けさせる必要がありました。

昨年も予定していたインドとパキスタンとの外務次官級会合を中止したばかりで緊張関係が続いていた両国ですが、見方を変えれば、今回の両国の雪解けは、アフガニスタンおよび周辺国家に、いま再び大きな危機が迫り米国としては急速に解決する必要があったためとも考えられますし、あと数ヶ月を切った米国次期大統領決定の前に、緊張関係にある地域の平定をオバマ大統領が急速に試みているとも言えますし、中国への周辺国からの牽制のためとも考えられます。

このような急速な緊張感の緩和は、東アジアも同じです。

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高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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