中国は、なぜ「北の核実験」を見て見ぬフリをするのか?

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いよいよ危ないと言われ始めた中国経済。株価の大暴落を繰り返し、もうすぐバブルが弾けるとまで囁かれているようです。その不安は広く波及し、世界経済に大打撃を与えようとしています。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、これを「見えない米中戦争」と評し、朝鮮半島の危機も踏まえながら世界経済の今後について、厳しい見解を示しています。 

中国と世界経済の行方 

今週は、北朝鮮の水爆実験についてお話ししようと思いましたが、あまりに多くの方々から緊急質問を頂戴しております、ストップ安が続く中国と世界経済の行方につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

いまにはじまったことではありませんが、昨年から中国では幾度となく株価の暴落が繰り返されています。

新年早々からも大暴落が発生し、今年から導入したサーキットブレーカーが2度も発動されたため、慌ててサーキットブレーカーを停止するなど、市場の混乱も目立ちます。

その影響は世界中に波及し、先進各国の株式市場も全面株安になっており、また、北朝鮮の水爆実験やサウジアラビアのイランと国交断絶など、世界的な不安様相が高まり、世界経済は先行きが見えない状態に陥っていると言われています。

本当にそうでしょうか?

まず、先週もお話ししましたように、サウジアラビアのイランと国交断絶は、サウジアラビアの財政の問題が大きく、また、この件は米国も事前承諾していたはずです。

その上、昨年末に米国金利が上がると、新興国に投資されていた資金は逆流するはずで、その時期はクリスマスと新年の休暇の後だと以前から言われてきました。

そのターゲットがBRICS諸国です。

今週、南アフリカの通貨ランド大暴落し、原油価格に支えられていたブラジル経済は、まったく光が見えなくなりました

中国は、事実上米ドルと通貨発行量のペグ政策をとっていたため、米国のしたたかな「通貨戦争」における戦略に「やられた!」と思っているようにも見られます。

なにしろ、中国人民銀行による人民元資金発行残高は、昨年後半から急減しており、前年比マイナスは実に16年ぶりになっているほどです。

リーマン・ショック後、人民銀行は中国元を大量に刷ってバラまいてきました。

それによってバブルが起きて、GDP2ケタ成長となり、その結果、GDPで日本を抜き去ったばかりか、軍拡にもいそしんできました。

かつて、日本のバブルは大蔵省の金融引き締めによって弾けましたが、米ドル通貨発行量と二人三脚同然で歩き、リーマン・ショックの米国を事実上救った中国は、今度は米国の金融引き締めによって、いまバブルが大きく弾けようとしています

この「通達」を、僕は昨年秋に行われたオバマ大統領と習主席の会談時にあったと見ています。

G2と持ち上げられ、21世紀の世界を担う大国だと米国に吹き込まれていながら、中国は国際通貨に格上げする程度の褒美で、結果米国に袖にされた形になります。

それゆえ、北朝鮮の水爆実験を「見て見ぬ振り」しているように思うのです。

一方、米国にしてみれば、中国の面倒を見れるような状態でないのと、おそらく、表面化していない米中間密約の亀裂となるようなことが、昨年起こったと思われます。

新春のウォールストリートジャーナルによれば、「中国今年は改革の正念場に」というタイトルを掲げていますが、中国にしてみれば、こちらだけの問題ではないと考えているはずで、このまま黙っているとは思えません。

現在、世界が直面しているのは、ジョージ・ソロスが言うように「世界的な金融危機のはじまり」には間違いありませんが(大波はもう少しあとだと思われます)、その本質は、見えない米中戦争にあるように思うのです。

すなわち、朝鮮半島は大きく揺れ動きます

なぜなら、金融戦争以上の大事を起こせば、財政問題は一時的にも見えなくなるからです。

(1バレル=US100ドルで予算を組んでいるサウジアラビアも同じです)

現在は、まだ小さな波にすぎません。

大波はまだまだこれからなのです。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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