『真田丸』第7話をマニアック解説。清洲会議は重役会議ではなかった?

2016.02.21
by yomeronpou
7回目 copy
 

前回の放送で、ドラマの舞台である長野地区における視聴率が再び31%と大躍進を遂げた、NHK大河ドラマ『真田丸』。MAG2 NEWSではナワバリストと呼ばれる城郭研究家たちが、毎回のドラマをさらに楽しむためのワンポイント解説をお送りいたします。今回は、三谷幸喜さんの小説、そして映画でも大きな話題を呼んだ「清洲会議」についてです。織田家の家臣が集まったこの会議、実際の様子はどうだったのでしょうか…?

今週のワンポイント(2月21日)

今週のワンポイントは清洲会議。三谷さんが、なかなか楽しい映画を作ってましたね。僕も、家内と映画館で大笑いしながら楽しんだ。ただ、実際の清洲会議は、織田家の家臣がみんな集まる中で粛々と行われた重役会議のようなものではなかった。実際の出席者は羽柴秀吉・丹羽長秀・池田恒興・柴田勝家の重臣四人に、信雄と信孝。

細川家に伝わる記録によれば、勝家が少し遅れて到着した時には、大筋はすでに秀吉の主導で決まっていた勝家が自分が来る前になぜ勝手に決めた!」と怒ると、秀吉が明智討伐に 何の働きもなかったくせに、偉そうなことを言うな!」と応じて一触即発になり、信雄・信孝が「まあまあ」と割って入ってどうにか収まったという。

なぜ、こういう流れになるかというと、清洲会議のテーマは(1)明智光秀ら討伐した謀叛人の所領をどう分配するか、(2)織田家の家督をどうするか、の二点だったから。メンバーのうち、秀吉と信孝、 丹羽長秀・池田恒興は山崎合戦の勝ち組。だとしたら、秀吉の仕切りで謀叛人の所領が山分けされるのは当然の流れだ。

(2)の織田家家督については、前回の氏政と氏直の話を思い出してほしい。信長は安土城を築いた時点で織田家の家督を信忠に譲り織田グループの総帥になっている。そんな信長が個人の実力で積みあげた権力を、会議によって継承するなんて無理。だから、この場合の「家督」とは、 現実には織田家領である尾張・美濃の支配権のこと。だとしたら、信忠の嫡男である三法師に家督を継がせるというのは全くの正論であって、反対の余地はない。実際には信雄と信孝のどちらに 家督を継がせるかという話ではなく、三法師の後見体制をどうするかがメインの議題だったはずだ。

ちなみに、清洲会議のあと秀吉は、表向きは信雄を立てて行動している。ただ、柴田勝家などの敵対勢力を次々に討伐して、その所領をぶんどったり、仲間と山分けしてゆくうちに、秀吉の勢力が大きくなっていった。これに危機感を覚えた信雄が、家康と結んだために起こるのが小牧長久手の役、というわけだ。(西股総生)

 

今週のワンポイントイラスト

takigawa

「上野国よりも茶器が欲しかった」と嘆いたと言われている滝川一益。「だから茶器がよかったん じゃー!」は『ふぅ〜ん、真田丸』でも使わせていただきました。そして甲斐の一番いい土地を得た 織田家家臣・河尻秀隆は一揆に攻められあえなく討死。ドラマに登場すらしない彼が割を食った ナンバーワン!(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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