1本の傘を3万円でも買いたいと思わせる、福井県発の傘メーカーの戦術

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3万円という価格ながら、順調に売上を伸ばす「濡れない傘」をご存知でしょうか。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』の著者・青山烈士さんが今回分析を試みるのは、そんな超高級傘「ヌレンザ」を手がけるメーカー・福井洋傘。数ある高級傘の中からヌレンザが選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。

競合他社との違いを訴求する

高級傘メーカーとして人気の企業を分析します。

福井洋傘(高級傘メーカー)

今回は福井洋傘の「ヌレンザ」にフォーカスをあてます。

戦略ショートストーリー

モノにこだわりを持ち、雨の水滴で濡れたくない方をターゲットに「お客様の都合が第一の文化」に支えられた「いつも乾いた状態で持ち歩ける」という強みで差別化しています。

濡れない高級傘という独自の商品を高島屋での売り場展開や「レクサスコレクション」に採用されることで、高級傘ブランドとして認知され、顧客の支持を得ています。

■分析のポイント

競合他社との違いを訴求する

3万円の傘と聞いてどう思いますか? 一般的には100円で傘が買える時代ですから、高いと思われる方も多いと思います。すぐ乾くからといって、傘に3万円払うかというと、多くの方はそうはいかないでしょう。100円と3万円ではあまりにもギャップ(価格差)がありますからね。

ですが、「ヌレンザ」は大衆向けの商品ではありませんし、そもそも100円で傘を買う人はターゲットではありません。だからこそ、百貨店を販路として催事などを行ってきたわけです。一部の価値がわかる人に伝わればいいというスタンスです。

そして、この価値を認めてくれたのがトヨタの高級車ブランド「レクサス」だったわけです。「レクサス」が「レクサスコレクション」に商品を選定する際の基準はあるでしょうが、基本的な考え方は、「レクサスに乗る方にふさわしい商品であるかどうかということだと想定されます。この考え方をもとに、車内を濡らさない高級傘「ヌレンザ」と高級車「レクサス」は相性がよいと判断したということでしょう。

ここでポイントになるのが、「レクサス」の視点です。「レクサスコレクション」に入れる傘を検討する際にまずは高級傘をいくつかピックアップしたと思われます。ピックアップされた傘はすべて高級傘ですから、高級傘であることは差別化にはなりません。だから既存の高級傘は皇室御用達や英国王室御用達といったことを訴求する「売り方」で差別化しているわけです。

その中で「ヌレンザ」は高級傘に濡れない機能をつけることで差別化を実現しています。複数ある高級傘から選んでもらうための「濡れない」という機能ということです。

重要なことなので繰り返しますが、競合他社が高級を売りにしている中で、自社も高級ですと同じことを売りにしても、選んでもらうことは難しいです。要するに、競合他社が、何を売りにしているかをしっかりと見定めたうえで、競合他社との違いを訴求することが極めて重要ということです。

今後、福井洋傘が、新しい価値を持った傘を提供してくれるのを楽しみにしています。

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