元「旅行読売」編集長が明かす、温泉が「心」まで綺麗にする理由

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みなさんはこのお正月に温泉へ行きましたか? 今回のメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』では、筆者の元「旅行読売」編集長・飯塚さんが2017年の初詣のお参りへ行き、温泉に入ることで「精神的に綺麗になった」と感じたというエピソードを明かしてます。なぜ、温泉に入ると身体だけでなく心も綺麗になるのか、ちょっと教えてもらいたくありませんか?

「温泉は心も美しくするもの」

「美肌の湯」ということが話題になることになって久しいわけだが、温泉は、肌だけをきれいにするわけではない。 意外に気が付かないかもしれないのだが表題の通り、心もきれいにしてくれるものだと痛感している。

このあとの「草津日記」にも書いたのだが、今年の初詣で、少なくともここ20年くらいでは記憶のない感情の変化が起こっていることに気が付いた。

つまり、それまでの初詣や神社仏閣参りでは、お賽銭を入れて手を合わせ、拝んで心でつぶやくことは全部「お願いごと」だった。

「けがをしませんように」「事故に遭いませんように」「ちょっとはお金が貯まりますように」「幸せになりますように」「いい本が書けますように」「今年こそ尺ヤマメが釣れますように」といった具合である。

それがなんと今年の初詣で、最初に心でつぶやいたのはこれだった。

「昨年は大きな病気もせず、無事に過ごせました。 草津にアパートを借りて、草津の人ともだんだん仲良くなれて、仕事をするための素地も出来上がってきました。 本当にどうもありがとうございました」。

むろんその後で「今年こそ本が出せますように。 ダイエットして手術も無事にできますように」と二つだけお願いしてきたのだが、お願いよりも先にお礼が浮かんだのは、少なくともこの20年以上の間でも記憶がない。

ふと我にかえって自分でも驚くとともに、少しは僕も成長できたのかも、とまたお礼をつぶやいて帰ってきた。

どうしてこんな心の変化が起きたのか、というと、やっぱりそれは、時間湯のおかげだと思う。 時間湯の湯もみは参加者全員が心を合わせて揉まないと、効率的に湯もみができない。 人の板の動きに心を配り、初めての人には優しく手ほどきをして、心を一つにして揉むことでいい湯が出来上がる。 これは、すでに長く時間湯に入れていただいて実感している。

長い湯治生活は、一人きりではなかなか続かない。 一緒にいる人と助け合い、励まし合いながらだからこそ続けられる。 だから、周囲の人に対して、とても気を遣い、迷惑をかけないように、という協調性がいつの間にか芽生える。

そういうわけで、一緒に湯治をしている人は、自分はとても苦しいだろうに驚くほど、とても人に優しい。 僕にもすごく優しい。

こういう気持ちは伝染するもので、僕もいつの間にか時間湯のあとに足拭きマットをはらって干したり、共同湯の外の灰皿の周囲にポイ捨てされたごみの数々を、残らず掃除してゴミ箱に片付けたりするようになった。

そういう気持ちにさせてくれた温泉、そして時間湯というものに、心からお礼を言いたいと思う。

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