新聞は国家の暴走を監視できているのか? 各紙「共謀罪」報道を比較

 

刑法の原則が覆る

東京】は1面トップに2面記事、3面に解説記事「核心」、5面社説、7面は「記者チェック」とドキュメントを含むほぼ全面大特集、28面・29面は見開きの「こちら特報部」で、共謀罪だけでなく政府に抗議する人々による「路上の民主主義」特集、31面社会面にも関連記事で、戦前の治安維持法で逮捕された経験者の声。フルスペックの扱い。まずは見出しから。

1面

  • 「共謀罪」捜査 当局の裁量
  • 犯行前に処罰可能
  • 政府が法案提出 論戦へ
  • 政府の看板に残る疑念
  • 「テロ」文言 法の目的になし

2面

  • ファクトチェック
  • 首相説明に矛盾
  • 「共謀罪の呼称誤り」→話し合い・準備で罪に
  • 首相不在で閣議決定 訪欧中で麻生氏代理
  • 法案、来月中 審議入りか

3面

  • 「テロ」現行法で対処可能
  • 国連主要条約 加入済み

5面

  • 刑法の原則が覆る怖さ(社説)

7面

  • 「共謀罪」法案 記者チェック

28面、29面

  • 原発、安保法制そして共謀罪に「ノー」
  • 路上の民主主義は今
  • 諦めない 新たな風も
  • 沖縄 粘り強く声を上げ

31面

  • 思想弾圧「二度とならん」
  • 治安維持法で逮捕 102歳女性訴え
  • 「抗議行動 萎縮してしまう」
  • 沖縄の市民グループ懸念

uttiiの眼

膨大な数の見出し。それぞれ重要な論点を含むが、紙面として特徴的なところを2箇所ご紹介する。1つは7面の「記者チェック」、もう一つは31面記事。

7面は、新聞としては異例の構えで作られている。まず、法案の主な条文を7項目ほど抜き出し、改正部分に傍線を施し、ポイントとなる部分にはラインマーカーのように黄色で印を付け、紹介している。新聞で条文を直接参照するとは思わなかった。いくつかポイントがあるが、「目的を規定した第1条にテロの文言が入っていないことを確認しておく。

また、このページには対象となる277の罪が総て書き出されている。刑法からは「窃盗」「背任」「横領」が含まれていることに、あらためて驚く。

さらに「記者チェック」は、6分野の記者を動員して「共謀罪」についてコメントさせている。6分野とは「法務省」「警察」「外務省」「首相」「公明党」「野党・国会」。「警察」担当の記者は、警察白書の中に「欧米でテロ防止を目的とした通信傍受や身柄拘束が認められる例を挙げ、日本でも「新たな対策の導入の検討を進める」としていること」に注目している。それらはテロ対策だけでなく、警察が「大衆運動」と呼ぶ、反戦・反基地運動、原発再稼働反対集会などの動向を把握しようとする場面で使われることになるのかもしれない。

この7面は、正直言って情報が過多なので、「永久保存版」的な位置付けにしたいところ。データはとくに貴重で、こういうときは電子版よりも紙の方が便利だということを痛感させられる。

もう1点。31面は、戦前、治安維持法で逮捕された経験を持つ102歳の女性の証言。農民運動が盛んだった三重県松阪市で、会合の案内ちらしを配り共産党の機関誌を読んだだけで逮捕され、50日ほど拘留される間、肩や膝を叩かれたりしたという。男性は殴られていて「かわいそうやった」といい、「怖い時代は二度と来てほしくない」と話しているという。

以上、いかがでしたでしょうか。

来月には審議が始まる可能性が高い「共謀罪」。会期末を睨んで微妙な攻防が国会内で繰り広げられるのでしょう。新年度も色々ありそうです。

image by: 首相官邸

 

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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