新聞は国家の暴走を監視できているのか? 各紙「共謀罪」報道を比較

 

「テロ対策に便乗」

毎日】は1面トップに3面の解説記事「クローズアップ」、社会面に関連記事。見出しから。

1面

  • 「共謀罪」法案 衆院提出
  • 政府閣議決定 与野党論戦へ

2面

  • テロ対策か否か
  • 政府、悪印象払拭を狙う
  • 答弁不安「急所」は法相

31面

  • 「テロ対策に便乗」
  • 9.11遺族 実効性に疑問符
  • 法の専門家 賛否 溝大きく

uttiiの眼

3面記事は、この法案がその触れ込み通り「テロ対策」に資するものなのかどうかを、直接に見出しに書き出している。中身は《読売》が指摘した「対象犯罪の絞り込み」。与党内でそのことが問題となった時の自民党法務部会の様子が描かれている。ある出席議員は、「以前は対象犯罪を削れないと言っていた。うそをついていたのか」と外務、法務の幹部を激しく問い質していたという。政府が今回の法案が必要だとする根拠は「国際組織犯罪防止条約の締結。懲役・禁錮4年以上の罪を対象とすることになり、日本では676になるのに、政府は閣議決定段階で277に減らした。政府によれば、「組織的犯罪集団」に適用対象を限定すれば、対象となる犯罪も限定できるということのようだが、277でも、非常に広い範囲で犯罪の予備段階を直接処罰の対象とすることになり、「対象犯罪はまだ幅広い。捜査機関による乱用の懸念はぬぐい切れていない」(村井敏邦一橋大学名誉教授)。そもそも条約はテロ対策を主眼にしたものではなく、マフィア対策。その点を突くのが《毎日》社会面の、以下の記事。

31面はユニークな内容。2001年の米同時多発テロで長男を失った住山一貞さん(79)が取材に応じ、「マフィアを取り締まる条約に入るための法案だと聞くのですが、それがなぜテロ対策になるのでしょうか。(立法のための)便乗ではないかと気になります」と語っている。住山さんは実質的なテロ対策を望む立場で、「テロを未然に防げるなら、捜査の幅を広げて個人の自由をある程度縛ることもやむを得ない」と考える方でもある。その住山さんが、今回の法案に違和感を持ち、「内部告発でもない限り、どう捜査するのでしょうか」と疑問を呈している意味は大きい。

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