【高城剛×衆議院選挙】米国型資本主義を採用したアベノミクス政権に待つ、想定外の未来「北朝鮮との戦争」

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今週は、かなりのご質問と取材を頂戴しております、日本の衆議院選挙につきまして、極めて私的にお話ししたいと思います。

結論から言えば、今回の選挙で大きな変化はない、と思います。なぜなら、日本はそこまで大変な局面に「まだ」陥っているわけでもなく、また、これは日本国内の問題だけではないからです(米国に大きな変化が起きていませんので、こちらも変わりません)。

まず、僕なりに現状を見ることにしましょう。お金の動き方や価値をみるとよくわかるのですが、ここ40年でもっとも日本円が弱くなっていることは間違い無く、経済戦争下にある現代社会で国力が弱まり、富が徐々に流出しているのは、間違いありません(OECD加盟先進34国成長率最下位)。これだけでもアベノミクスは失敗で、今後良くなる見込みも良案もありません。日銀バラマキ策の前に、国内の構造を変えてからバラまくことをしなければ、なにも変わらないどころか悪化するのはわかっていたはずで、矢の順番が逆なのです。安倍政権発足時の日本は、欧州危機のような緊急対策時にありませんでしたので、矢の順番を逆にする時間があったはずです。ですので、首相本人の理解はともかく、その目的は増税と米国のQEに歩調をあわせることにありました。すなわち、選挙の論点はすでに失敗したアベノミクスにありません。増税は決まり、米国QEの対岸の地として「異次元の緩和」を行ってしまった以上、引き返せないからです。ちなみに、トヨタなどの業績がいいのは、円安だけではなく、米国のQEのおかげです。販売台数の北米の伸びを見ても明らかです。

さて、ここで、何度か本メールマガジンでもお話ししましたが、あらためて僕のアベノミクスの見解をお話ししたいと思います。それは、いくら引き返せなくなったとは言え、これを理解しておくことで、今後のことがより見通せるようになるからです。

アベノミクスの本質は、株価を上げることにありません。米国QEのフォローアップや、日本の財務省は増税のためなのでしょうが、米国(ウォール街)の意図するところは「流動性を高めること」に本質があります。株価があがれば、それに引き寄せられて多くの「カモ」が場に参加することになり、その人々と資金は「100%食い物」にされるのが現代の金融システムです。それを食べるのは、ゴールドマンサックスを二軍に追いやった超高速取引業者=ロボットを所有する人たちで、今年の夏に、東証が1円単位で取引できるようになったことや(誰のために?)、東証のサーバーに近い「物理的空間」を年間20億円以上で超高速取引業者に貸し出していることからも明らかで、現在、年金基金をはじめとする我が国の富は、100%超高速取引業者の食い物にされているのが現状です。なにしろ、超高速取引業者は絶対に損することがありません。

このようなことから、アベノミクスそのものは株価を上げて喧伝することは表面的なことにしか過ぎず、その実は、株式の流動性を高めることにあると僕は思いますが、もしかしたら安倍首相ご本人はそのことに気がついていないのかもしれません。この現代金融工学の最先端の本質を、少なくとも麻生財務大臣に僕がお会いしお話しした限りに、大変失礼ながらそのような知識を持ち合わせているとは正直思えませんでした(番記者のマスコミがこのような表現をすることはないと思います)。すなわち、現政権のトップの人たちは、現在、世界的な市場でなにが起きてるのかわかっていませんし、これから起きることも「想定外」のはずです。

これらを大前提として、現在米国で起きていることを、さらに理解する必要があります。

米国の議会政治は、選挙に巨大な資金が必要になっている関係上、政治家はスポンサー制度に陥っています。少し乱暴に言えば、米国とはいまや巨大資本家そのものを指し、米国政府はそのフロントに過ぎません。

日本もこの米国型「資本家主義」を取り入れることにしましたので(小泉改革やアベノミクスにより)、日本国政府は、米国(とその背後にいる巨大資本家)と、経団連をはじめとする日本の企業群のフロントとして働くことが最重要課題となります。

よって、ウォール街=主に米国民主党のために、国富を取り崩して株の流動性を高め(僕的にいうリキッド化に向かうということ)、国内の資本家のために株価を高め(同時に「カモ」を集め)、日本の財務省のために増税に向かい、その次にやっと国民のことを考える、というのが現実だと思います。当たり前ですが、資本家の代弁者であるメディアが国民にこのようなことを言うわけありません。日本も米国同様「資本家主義」の路線で行くことに決めたのですから、もう戻れません。米国の地方都市の貧困の現実が、間違いなく日本の未来となります。これを、冷静に受け止めなくてはなりません。

そして日本の次の選択は、米国共和党旧勢力のための、戦争準備を受け入れるか否か、にあります。

安倍政権のメインミッションは、これも本メールマガジンで何度か取り上げましたように、集団的自衛権およびその後に続く憲法改正にあります。少し乱暴な直近の予測でお話しすれば、もし、朝鮮半島に有事があった場合(どの国の意向があったかはさておき)、北朝鮮が日本にミサイルを撃つ可能性を否めないので、集団的自衛権を発動し、2016年に米軍が去った韓国と日本の自衛隊が連合軍となり、北朝鮮と戦うことが考えらえます。そして辛勝したのち、焼け野原になった北朝鮮の利権を獲得し、日本の「コンクリ経済」を流し込めば経済面では国益に叶うのかもしれません。平壌にドコモ支店もできるでしょうし、事実上、日本国内に内需が見込めない以上、「右肩上がり」を目指すなら、このような手は良し悪しは別として「米国的」有効な手立てのひとつになります(実際は、半島利権で中国と揉めるでしょうが、米国共和党が仲裁というか主導します)。

そのようなために(だけとは言い切れませんが)、安倍政権になってから米国の「旧型」の兵器を続々と購入しています。国防の観点から兵器の強化はまだ理解できますが、「旧型」の兵器を買うことは明らかに国益に反していますし、この理由は明らかにされていません。現在の日本は、米国にとっては「型落ち」を大量に買ってくれる「おいしいお客」であることは間違いありません(止まっていた米国内の古い兵器工場がフル活動しました)。

こう考えると、民主党が政権与党になった鳩山小沢政権時が、戦後唯一本気で米国と距離を置き、日本独自の道を進む最後のチャンスでした。しかし、そのことはマスコミによって知らされることはないまま、国民の信任を得ることはできませんでした。ですので、日本は「米国(主に共和党旧勢力)の言う通りにする道」(事実上国内は疲弊してもあらゆる形で献金を続け、政治的に従うこと)しか残されていません。

ですので、国防の観点も考慮しなくてはなりませんが、10年から20年以内に戦争に進みたいなら自民党、どうにか回避する道を模索したいなら現状民主党しか、小選挙区制度では選択肢はない、というのが僕の考え方ですが、結果同じように思います。なにしろブレーン(官僚)が、同じわけですから。もはやアベノミクスは論点ではありませんし、引き返せません。そして、まだ機は熟していませんし、共産党がイタリアのように中道左派政党に進化することなども、今後10年以内に訪れることになるでしょう。

ここ数年間の自著でも何度かお話ししていますように、日本のターニングポイントとなるのは2018年以降になると思います。

 

『高城未来研究所「Future Report」』182号(2014年12月12日号)
著者/高城剛
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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