あの週刊文春も語りだした、金正恩「暗殺作戦」の現実味

 

「宮廷クーデター」というややソフトな方法

空爆プラス特殊部隊突入という戦争シナリオは、かなり上手くいった場合でも、破れかぶれの反撃による犠牲の拡大、難民の大量流出、国家崩壊による北のシリア化など、あらゆる悪いことの連鎖が起こりうるから、韓国はもちろん中国も一貫して断固反対である。

これを巡って93~94年の第1次核危機の時から米中韓の間でずっと繰り広げられてきた議論の1つの行き着く先は、北の政治指導部と軍部に一定の影響力を持つ中国がその人脈を活用して宮廷クーデターを決行するという、まあ何と言うか、(犠牲が少ないという意味で)ベターなシナリオである。

実は、それを中国と謀っていたのが金正恩の叔父の張成沢で、彼らの構想は正恩に替えて正男を据えて改革・開放路線に転換することを目論んでいた。が、そのことを正恩に知られて張は13年末に虐殺され、その庇護下にあった正男も今年になって殺されてしまった。しかし、中国はまだ、正恩を「平和的に」除去して、正男の息子などをカードにクーデターを仕掛けるシナリオを捨てていないと言われる。

もちろん中国は、そんな荒事を軽々に発動したくない。だから事あるごとに、「北朝鮮の(核・ミサイル)問題は、米朝間の話し合いで解決すべきことだ」と言い続けている。何のことかと言えば、それは米朝で平和協定を結んで、対立の基本構図そのものを除去したらどうですか、それが一番安上がりでしょうに、という意味である。それに対して米国は「中国がもっと大きな役割を果たすべきだ」と言っていて、その意味は「そろそろ中国シナリオの宮廷クーデターの出番ではないのか」ということである。

4月の習近平訪米では、この辺りの微妙極まりない北朝鮮対策が話し合われるはずで、そこでは暴力的解決一本槍のような単純な話になるとは考えられない。中国は、戦争を避けるように言い、米国は、ならばどうやって正恩を鎮めるのか、それが無理なら彼を除去するのかの見通しを問うだろう。日本は、本当は、その硬軟両様の微妙な話に噛み込んでいなければならないのだが、山口記者の記事を読む限り、単純な暴力的手段の発動を煽る立場のようである

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