スバルに受け継がれる、東洋最大の飛行機会社を作った男の遺志

jog20170403
 

富士重工業は、4月1日より社名を「株式会社SUBARU」に変更しました。認知度の高い同社の車のブランド「スバル」にあわせ、企業価値を高める狙いがあると見られています。今まさに生まれ変わろうとしているSUBARUですが、今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、その前身会社である「中島飛行機製作所」の創業者、中島知久平の熱意あふれる「国産飛行機誕生物語」を紹介しています。

中島知久平~「航空立国」の志

群馬県は利根川の河川敷に作られた滑走路の片隅に、傘のお化けのような骨組みがうずくまっていた。「あれが中島の飛行機いうもんか?」「けったいな飛行機じゃなあ、発動機が前についとるやないか」。見物人たちはそんな事を言いあっていた。

飛行士が操縦席に乗り込むと、プロペラが回り始めた。飛行機は地上滑走で滑走路の端まで行き、風上である北方の赤城山の方に機首を向けた。轟音とともに、飛行機は走り始め、全力滑走に移ると、機体がふわりと浮いた。「飛んだぞ!」見物人の間から拍手が起こった。

ふいに機が左に傾斜した。北の赤城山から吹いていた風が、東風に変わったのだ。まだ浮力が十分についていない状態で横風を受けた飛行機はそのまま横転墜落してしまった。

一台の車が大破した飛行機に近づき、車から降りた人物が「おーい。佐藤君、大丈夫か」と声をかけた。幸い、飛行士の佐藤は軽傷であった。「いやあ、無事でなにより。機はまたできる。わしも一号機で成功しようとは思わんじゃった」。

この人物が日本で最初に民間会社で飛行機開発に取り組んだ中島知久平であった。知久平は、その後、2号機、3号機と取り組んだが、いずれも失敗に終わった。

当時は第一次大戦の末期で、日本は未曾有の好景気のもと、大インフレと米価高騰に見舞われていた。「札はだぶつく、お米はあがる、あがらないぞえ中島飛行機」という落首が流行り、これを耳にした知久平は苦笑して、「まあ、見ておれ」と設計図とのにらめっこを続けた。

「満洲で馬賊になって、ロシアをやっつけてやる」

中島知久平は、明治17(1884)年、群馬県新田郡の富裕な農家に生まれ、当時の常として愛国少年として育った。ロシアの三国干渉に憤慨して、いずれ満洲に渡って馬賊になり、これを日本大陸義勇軍に発展させて、ロシアをやっつけてやると決心した。遠大な志を立てそれに向かって邁進するという知久平の性格は、この頃から現れていた。

満洲の馬賊になるには、まず軍人になるのが近道だと考えて、明治33(1900)年、16歳になった知久平は東京に出て、独学で陸軍士官学校を目指した。「百姓の子はそんなに勉強しなくともよい」と祖母が反対したため、2年分の生活費を家の金庫から無断で拝借して、上京したのである。「お金は何倍にでもして必ず返します」という置き手紙を置いて。

東京での猛勉強の最中、志望を海軍機関学校に変えた。馬賊になるには陸軍の方が良いが、満洲に集結するロシアの大軍を討つには、兵員を運ぶ海軍が要ると意見されたからである。

明治36(1903)年、無事に海軍機関学校に合格。反対していた祖母も、「この中島の家は、元々新田義貞にもゆかりのある土地柄の家じゃ。海軍将校の卵が出たとは、お国にご奉公できて、忠臣の義貞公もお喜びであろう」と相好を崩した。

「よし、次は飛行機だ」

しかし、知久平が在学中に、日露戦争が勃発し、日本の陸軍がロシアの大軍を満洲の地から駆逐してしまった。「もう、おれが馬賊になる出番はない」と思った知久平は、不屈のアイデアマンとしてすぐ次の夢を見いだした。「よし、次は飛行機だおれの手で日本の空に飛行機をとばして見せるのだ

その2年前、1903(明治36)年末に、アメリカのライト兄弟が人類で最初の動力飛行に成功していた。彼らの目標はアメリカ陸軍に飛行機を採用してもらう事だった。フランスやドイツでも、軍事利用を目的として飛行機の開発競争が始まっていた。

日本海海戦の歴史的な勝利で、大艦巨砲主義が盛り上がっていたが、知久平はその先のことを考えていた。次の相手はアメリカだと言われているが、アメリカ相手に建艦競争をしても敵うはずがない。しかし1隻800万円の戦艦も、1機5万円の飛行機20機が魚雷攻撃で沈めてしまえば、差し引き700万の得となる。

級友達は「人間が乗るのがやっとの飛行機が、どうして何百キロもある魚雷を運ぶことができるんだ」と笑ったが、知久平は「おれがその魚雷を落とす飛行機を作ってやる」と答えた。

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