世界第2位のハンバーガーチェーンながら、これまで日本では成功を収めることができなかった「バーガーキング」が生まれ変わろうとしています。先日、我が国での経営権を香港の投資ファンドに譲渡することを発表、日本市場での事業拡大に向け大きく舵を切りました。無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』では著者でMBAホルダーの安部徹也さんが、ライバルがひしめくハンバーガー業界で同社が成功のために取るべき「現実的な戦略」を考察しています。
新たな資本で日本での事業拡大を図るバーガーキング
世界第2位のハンバーガーチェーン、「バーガーキング」が日本での運営権を香港の投資ファンド「アフィニティ・エクイティ・パートナーズ」に譲り、長年低迷してきた日本市場での拡大を目指すようです。
もともとバーガーキングは、1993年に西武グループがアメリカ本社とフランチャイズ契約を結び、日本での事業をスタートさせます。当初は西武線沿線や西武グループが展開するプリンスホテルなどのリゾート施設を中心に店舗展開を図る計画でしたが、アメリカ本社と経営方針に食い違いが生じ、提携を解消するまでに関係がこじれます。
その後、店舗を引き継いで日本での事業を担ったのがJT(日本たばこ産業)。JTは1996年にバーガーキングジャパン株式会社を設立すると、当時森永製菓のグループ会社であったハンバーガーチェーン「森永LOVE」を買収し、4、5年の間に一気に100店舗を日本で展開する事業計画を打ち出します。
ところが、この計画は最大手のマクドナルドの積極的な価格攻勢の前に頓挫することになります。マクドナルドは1990年代後半のデフレ経済下、ハンバーガーの大幅な値下げを実施。平日半額キャンペーンでハンバーガーをわずか65円で提供するなど、価格でライバル企業を圧倒します。
そして、価格競争に敗れた結果、バーガーキングは経営不振に陥り、2001年3月に日本市場から完全撤退の憂き目に遭うことになるのです。
日本市場への再参入を果たした後も続く不振
バーガーキングは、その後2006年に「ロッテリア」を展開するロッテと、「ロッテリア」再建を支援するリヴァンプが共同でアメリカ本社とフランチャイズ契約を結び、2007年に新宿に1号店をオープンして再参入を果たします。
再参入時は3年で50店舗を展開する目標を掲げますが、計画通りに事業は軌道に乗らず、結局2010年には負債14億円を引き継ぐことを条件に、韓国のロッテリアにわずか1,400ウォン(100円)で引き渡して支援を仰ぎます。
ただ、日本のハンバーガー市場は2010年には過当競争から最大手のマクドナルドでさえ業績不振に陥るなど縮小傾向にあり、市場のパイが減る中で拡大路線に走れば兄弟会社である日本のロッテリアの業績に悪影響を及ぼしかねず、積極的な展開を図ることができないジレンマに悩まされることになるのです。
2014年から15年にかけて、ライバルのマクドナルドが続け様の不祥事で危機的な状況に陥った際には、バーガーキングもマクドナルドが閉鎖した店舗に新たに出店して攻めに転じましたが、結局は思うような事業拡大を図ることができずに終わってしまいます。
そこでバーガーキング本社は日本での運営権を韓国のロッテリアから香港の投資ファンドに引き継ぎ、思い切った攻勢に出る決断を下したのです。