【南北朝鮮】金正恩第一書記、5年以内に「朝鮮戦争」再開か

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北朝鮮の「7日戦争作戦計画」VS米国の「5027作戦計画」

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.38(2015.1.15発行号)

金正恩第一書記は、韓国に南北首脳会談を呼びかけた新年辞の前に労働党秘書室幹部らに戦争準備の方針を伝達したと「自由アジア放送」が伝え、これを「TV朝鮮」が1月5日の夜7時のニュースで流した。

金第一書記が「祖国の統一大戦を早期にやると言ったら、5年後程度と思っているようだが、それは誤った考えで、(5年より)もっと時期は早まるだろう」と非公式の場で語ったとするこの報道や、韓国を武力統一するための「7日戦争作戦計画」が「2012年8月に作成され、金第一書記によって承認された」との脱北者の証言が中央日報(1月8日付)に掲載されたこともあって、北朝鮮による戦争勃発の可能性が韓国軍及び情報関係者の間で語られ始めている。

中央日報が元高官とされる脱北者の発言として伝えた「7日戦争作戦計画」とは、米軍が援軍を送り込む前に韓国を占領するという電撃作戦、即断即決作戦を指す。

「7日戦争作戦計画」は第一段階の奇襲攻撃を加える、第二段階の全面戦争に拡大させる、第三段階の核・ミサイル等大量破壊兵器で総攻撃する、第四段階の特殊部隊を投入する、そして最終段階の米援軍が到達する前に一週間ないし二週間で決着付けるとの5段階から成っている。

この計画によると、北朝鮮が仕掛ける奇襲攻撃及び局地戦が全面戦争に発展した場合、北朝鮮軍は序盤に気勢を制すため初日にソウル、京畿道、義政府、水原に向け集中砲火し、保有する核ミサイルなどの戦力で韓国軍を圧倒し、首都圏を3日で制するとしている。

北朝鮮は地上軍兵力の70%をDMZから100km内に配備している。ソウルはDMZから50km離れてない。

短期決戦の初日、人民軍4個の前方軍団配下砲兵部隊は発射命令を受けた時から30分の間、240mm放射砲と中長距離砲126,000発と地対地短距離ミサイル1,000発を米韓連合軍基地に向かって夕立のように降り注ぎ、戦車4,100台、装甲車2,100台で進軍、南下する。

砲兵部隊が保有する240mm放射砲(多連装ロケット)は22連装と40連装の二種類あるが、射程距離70kmの240mm放射砲3,400門が102,000発発射し、同時に射程距離50kmの170mm自走砲など中長距離砲8,000門が30分の間に計24,000発発射することになっている。加えて、地対地短距離ミサイル(スカッドB=300km、C=500km、D=700km)1,000発で攻撃する。

ミサイル発射基地は25か所あり、基地から発射されたミサイルは3~5分以内に韓国内の標的に打撃を与える。特に休戦線付近に配置されたミサイルの場合、発射後1分も満たない内にソウルを攻撃できる。地対地短距離ミサイル1発を撃てばサッカー場3~4個の面積が焦土化するというシナリオだ。

▲米韓連合軍の「5027作戦計画」

米韓連合軍の作戦計画は状況と対応によって作戦計画が練られているが、朝鮮半島での全面戦争を想定しているのが1974年に作成された「作戦計画5027」である。

北朝鮮が西海5島や特定地域に兆発を仕掛けた場合、米韓連合軍で強力に対応し、挑発の度合いによっては、一気に武力で統一する計画で、これまでに何度か修正が加えられてきた

「5027作戦計画」は5段階に分かれ、第一段階では北の南侵を抑止する。
北朝鮮による南侵兆候があった場合、全軍に「デフコン3」が発令され、戦争準備態勢に突入する。休戦ラインからソウルまでの距離が50km程度で北朝鮮の南侵を警告できる時間的余裕が24時間から76時間に限られているためだ。

第二段階では休戦ラインで防止する。
米韓連合軍は圧倒的に優勢な空軍力とミサイルで北朝鮮の心臓部を叩き、北朝鮮の南侵を休戦ライン北側で阻止する。北朝鮮のスカッドミサイルとノドン・ミサイル攻撃に対しては韓国に配備してあるパトリオットが迎撃する。第7艦隊所属の空母が配属され、北朝鮮軍の後方を集中攻撃する。

第三段階では北進して、北朝鮮軍を撃滅する。
米韓連合軍は北朝鮮軍を休戦ラインまで押し返すだけでなく、休戦ラインを突破し、同時に休戦ラインを迂回し、上陸作戦を敢行し、北進する。

第四段階では平壌を占領する。
平壌以北の清天川近くまで占領し、住民統制など軍事統治を実施し、平壌を孤立させる。

第5段階(最終段階)は国土を統一する。
北朝鮮体制を瓦解させ、韓国主導による統一を実現させる。

米国には「5027作戦計画」以外にも「5026」「5029」「5030」の三つの作戦計画ある。

「5026作戦計画」は北朝鮮の核施設を空爆するため1994年に作成された計画である。

北朝鮮の核施設へのサージカルストライク(超精密空襲)を仮想して作成された。即ち、北朝鮮の核施設など戦略目標をトマホーク巡航ミサイルで先制攻撃する作戦である。北朝鮮の核施設など戦略目標をF-15E、F-117、B-1B、B-52Hなど戦略爆撃機、トマホーク巡航ミサイルで先制攻撃を加える作戦計画である。

「5029作戦計画」は北朝鮮で急変事態が発生した場合を想定して1999年に練られた作戦計画である。

北朝鮮最高指導者の急死、クーデターや内乱による政権崩壊に伴う核ミサイルや化学兵器など大量破壊兵器の使用や流出を阻止し、大量の難民発生に対応するための作戦計画である。基本的には韓国に飛び火しないようにするための封鎖政策である。韓国人が人質に取られた場合の救出作戦や北朝鮮で大規模な自然発生が生じた場合の人道支援のための軍事作戦も含まれる。

「5030作戦計画」はブッシュ政権下の2002年に作成された計画で、北朝鮮を兵糧攻め、干し挙げるための作戦計画である。

当時、ラムズフェルド国防長官を中心にペンタゴンにっよって作成された。軍事衝突発生前に北朝鮮政権を転覆させる多様な低感度作戦で、統帥権者である大統領の承認なしで遂行できる作戦である。R-135偵察機を北朝鮮の領海に近づけ、北朝鮮の戦闘機のスクランブル発進を誘導させることで燃料を消費させる。数週間にわたって米韓合同軍事演習を行い、北朝鮮の戦争備蓄を消費させる。制裁を掛けて、北朝鮮の金融システムを封鎖する。虚偽の情報を流してかく乱する作戦も含まれている。

 

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.38(2015.1.15発行号)

著者/辺真一
1947年東京生まれ、明治学院大学英文科卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊、現編集長。著書に「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)、「韓国経済ハンドブック」(全日出版)、「北朝鮮知識人からの内部告発」(三笠書房)など。
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