【中東取材】日本人記者が戦争取材に向かない理由

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『上杉隆の東京脱力メールマガジン』第298号(2015年2月20日号)より一部抜粋

1年半ぶりに中東を訪れている。前回2013年の取材ではレバノンとシリアを訪れた。すでにその時点で100万人以上のシリア難民が発生していた。

今回は日本人人質事件殺害直後ということもありシリアには入らない。シリアから周辺諸国に大量に難民が流れている現状から、無理に入国する必要もないと判断していることもある。

取材拠点のレバノンの他にトルコ、ヨルダン、エジプトのどこかの国への取材を予定している。すでに現地にいながら計画が確定していないのを不思議に思う読者もいるかもしれない。だが、このような曖昧な取材こそ、むしろ命を守ることにつながると自らの教訓が示している。

今回は文藝春秋の取材だ。普段の戦地取材は個人取材であり、取材費も保険もすべての経費は自腹だった(ゴルフ取材は除く)。だから、こうした出版社持ちの海外取材は初めてだ。

実は、それには自分なりのルールを作っていたのだ。今回の中東取材では当初、ベイルートとトルコで数日、ヨルダンかエジプトのどちらかで数日滞在という強行軍を想定していた。

しかし、そのスケジュールはなくした。代わりに緩い日程での取材旅行となった。なぜか?

戦争(内戦も含む)取材の失敗の原因は、強行日程によるものが多い。日程上の無理が取材を台無しにするばかりか、命取りになることもある。12年前、イラク戦争取材の際の失敗から、私はそれを痛烈に実感し、学んだものだった。

当時、渡航直前に話を聞きにいった軍事ジャーナリスト(当時)の加藤健二郎氏や山本美香氏(故人)などのジャーナリスト仲間、あるいは中東調査会の大野基裕氏(当時/現国会議員)や外務省の職員などからのアドバイスは見事にまで一致していた。

それは「無理をするな」ということに尽きた。換言すれば「日程を決めすぎる」ということでもある。

外務省の職員や商社などの現地駐在員からの具体的アドバイスも同様だった。そうした情報を集めていたにも関わらず、12年前の私は勘違いの「勇気」を誇っていた。そして、私は無理をして失敗を犯した。

 

『上杉隆の東京脱力メールマガジン』第298号(2015年2月20日号)より一部抜粋

著者/上杉隆 (ジャーナリスト〈一時復職中〉)
情報操作だらけの大手メディア報道では絶対伝えない情報を届ける「東京脱力メールマガジン」。第一次安倍政権の内幕を描いた「官邸崩壊」以来、安倍晋三の仇敵となった上杉隆が、ブログやtwitter、facebookでは書くことができない、今、伝えたい情報とは!
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