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アルケゴス破綻で見えた規制の穴。なぜ大手金融機関が巨額損失を被った?ファミリーオフィスの実態とは=今市太郎

ファミリーオフィスのアルケゴスが追証に応じられず破綻し、大手金融機関が巨額損失を被った。なぜこんなことが起きたのでしょうか?リーマン・ショックから12年半近くを経過して、金融業界はまたもかなり緩くなりはじめていることがよくわかります。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

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※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2021年3月31日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

アルケゴス破綻、何が起きた?

今週、早々から始まったファミリーオフィスであるアルケゴスのデフォルト問題。当初ヘッジファンド業界の破綻であるという報道が出たことから、これは横並びで業界全体でえらいことになるのではないかと緊張が走りました。

実はこの組織がファミリーオフィスであったこともはっきりし、ますますその内容が釈然としない状況であることも顕在化してきています。

いったい何が起きているのでしょうか?

ここまでに報道された内容を、いったんまとめておきたいと思います。

ファミリーオフィスとは、プライベートバンキングの親玉的存在

アルケゴスの内容紹介で随所に登場する言葉が、「ファミリーオフィス」と呼ばれるものです。

一般的な定義によれば、一定規模の資産を保有する同族及び一族を対象に専属の外部機関が投資運用をするもの。米国では富裕層を対象として、3,000以上のファミリーオフィスが存在するとされています。

いうなれば、規模の著しく大きいプライベートバンキングということで、それ自体はヘッジファンドとはまったく異なりますから、普通は高いレバレッジをかけてパンパンに膨らんだ投資などは行わないわけです。

しかし、渦中のファミリーオフィス「アルケゴス」を設立したビル・フアン氏は、10年前にインサイダー取引でお縄頂戴となりヘッジファンド業界から追放された存在です。そのため、規制が緩くSECにもほとんど取引内容を報告する義務のないファミリーオフィスの形式を選択し、いわば秘密裡に取引することで資産を大きくしていったものと思われます。

市場からその存在が消えてすでに10年が経過しているわけですから、タイガー・アジア・マネジメントを知る人は「ああ、あの人物か」と思ったようですが、リーマン・ショックすら経験していないようなミレニアル世代にとっては、まったく知らない存在がいきなり全面に出てきたことになります。

Next: なぜ主要銀行はリスク満載のアルケゴスと取引した?



レバレッジを効かせて急激に大きな原資として運用か

もともとフアン氏の保有していた資産は日本円にして200億円足らずだったものを、短期間で1兆5,000億円にまで大きくさせたわけですから、ここだけをとってもなかなかのやり手トレーダーであったことがわかります。

どうやらこれにほぼ8倍程度のレバレッジをかけて、1,000億ドル近い取引をしていたようです。それも株の現物取引ではない、いわゆるCFDによる取引であったことがポイントです。

本来なら、米株で1億ドルを超えるものを保有している場合には、四半期ごとに保有資産について規制当局に報告する必要があります。それをくぐり抜けて取引を続けてきたことがわかります。

ただ、投資銀行業界はこのアルケゴスが株価の下落から追証を求められてデフォルト寸前になっていることは、先週の段階ではっきり認識していた様子。25日には主要の銀行が出席した電話会議なども行われたようです。

そして、JPモルガンが26日に強制決済を行い、アルケゴスの資産の差し押さえに動いたことから問題が顕在化。今週になってから大騒ぎとなったわけです。

問題は、なぜ主要銀行がこうしたオフィスと取引したのか

ミレニアル世代にとっては聞いたこともない名前だったのでしょうが、業界に長くいれば、このフアン氏がどういう存在なのかは知っているでしょう。

アルケゴスと取引した金融機関も十分にわかっていたはずで、ファミリーオフィスとは言え、かなり脇の甘さが目立つ状況です。

国内では野村のみならず三菱UFJ証券も330億円程度の損失を食らっているようで、レバレッジをかけて飛んだ損失・追証部分は恐らくこのファミリーオフィスからはまったく回収できずに、相対取引を許した各金融機関の損失になることは間違いなさそうです。

どの金融機関も「いくらの損失になるのかよくわからない」としているのは、このオフィスが正確に清算して損失を確定させないとわからないからなのでしょう。

言ってみれば、店頭FX・CFD業者がかなり大きな資金をレバレッジをかけて運用する個人と相対取引の契約を結び、好き勝手に売買させてみたら大きく相場が下落して、証拠金不足から追証が発生し、払いきれずに破綻した……というのがごくごく簡単なこの事象の構図ということになりそうです。

リーマン・ショックから12年半近くを経過して、金融業界はまたもかなり緩くなりはじめていることがよくわかります。

Next: ほかのファミリーオフィスは大丈夫か?金融機関の緊張感も薄れている



ほかのファミリーオフィスは大丈夫か?

米国内で3,000もあるファミリーオフィスですから、今回のような事例が他にはないのか?と心配になるところです。

今回の1兆円を超える損失をどの銀行がどのように痛み分けすることになるのか。今後の展開が大いに注目されるところです。

誤解を恐れずに言えば、随分と稚拙でお粗末なビジネスを大きな金融機関が行っていることがモロバレしてしまったということでしょう。

コンプラも目利きもありゃしねえというのが、足元の金融機関の実態です。

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今市太郎の戦略的FX投資』(2021年3月31日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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