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コロナ下の新入社員に5つの特徴。ハラスメントリスクを避けて一流に育てる方法は?=午堂登紀雄

新入社員の教育はコロナ下でさらに難易度が上がっています。今回は入社3年未満の新卒社員に見られる5つの特徴を解説しつつ、どう育てるべきかを考えます。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。

承認欲求を理解し、コミュニケーションの頻度を上げる

コロナ下の今年も新入社員が入社し、大手企業でもGW前後で配属先が決まる頃ではないでしょうか。あるいはリモートワーク・テレワークが長引く一方、リモート入社組の中にはまだほとんど出社した経験がなく、直接一緒に働いてない人もいるかもしれません。

そんな中、入社3年未満の新人をどう育てていくのか。上司や先輩も試行錯誤の最中かもしれませんが、私の経験から部下育成の心構えを提案したいと思います。

人は誰でも承認欲求を持っています。個人差はありますが、年齢が若いほどその欲求は強い傾向があります。

だから若手社員は、「上司は自分のことを見てくれている」「上司は自分を認めてくれている」ということを、常に確認して安心したいのです。

もちろん、上司のことなど歯牙にもかけない独立心の強い部下もいますが、それでも認められればうれしいもの。「言わなくてもわかるだろう」とほったらかしにしていると、部下の心は確実に離れていきます。

また、ほとんどの人はその職場に「自分の居場所」を求めています。「自分はここにいられる、居ていいんだ」という安心感は集団への所属欲求であり、人間の生存本能でもあるからです。

そのため、上司にかまってもらえない、ほめてもらえない、叱られてばかり、話をちゃんと聞いてくれないという状況が続くと、人は「自分はここにいてはいけない存在なんじゃないか」と感じます。

所属欲求を否定されるのは生存本能を脅かされることと同義ですから、やはり部下の心は離れ、最悪離職ということにもなりかねません。

男女の仲も同じく、会話が減れば心は離れていきます。芸能人カップルでも、お互いに多忙ですれ違い生活が続けば、相手が何を考えているかわからなくなり疑心暗鬼となって離婚する、というケースは珍しくないように、物理的な会話の頻度は信頼関係の基本です。

だから、ひとことでもいいので「よう、最近どう?」とか「がんばってるみたいだね」「あの件、よくやったね。次も期待しているよ」などと、部下にしっかり伝わるよう行動で示す必要があります。

コロナ下こそ、コンタクトは密に

しかし、リモートワークが長引けば接触の頻度は確実に減りますから、上司は意識してコンタクトの頻度を上げることです。

特に新入社員の方から「オンラインミーティングをしてくれませんか」などとは頼めませんから、上司の方からこまめに声をかける必要があります。

始業時と終業時の2回だけではなく、「このタイミングでミーティングしてみる?」「これが終わったら1回確認作業を一緒にしてみようか?」などと、上司に気軽に相談していいんだという雰囲気を作っておくようにする。

「かまってちゃんかよ!」とあきれるかもしれませんが、人間心理とはそういうものです。

だから繰り返しになりますが、とにかく「あなたのことを見ているよ」「あなたのことを大切に思っているよ」というメッセージを、常に送り続けなければなりません。

一方、気を付けるべきは言うまでもありませんが、「手柄の横取り、責任の押し付け」「放任という名の無視」「ネチネチ叱責」「約束を守らない」「自分がミスったら逆ギレする」「決断しない」「何かにつけて嫌みを言う」「いつも不機嫌」などというのはご法度です。

Next: 部下のやる気を引き出すのは上司の務め。コロナ新卒の特徴は?



部下のやる気を引き出すのは上司の務め

「やる気のある部下がほしい」と思うのは誰でも同じですが、それは幻想だと思った方がよいでしょう。

いまの中高年世代の頃とは違い、いまは上司が部下のやる気を引き出してあげなければならない時代です。だから「もっとやる気を出せ」「やる気あるのか?」「なんでそんなにやる気がないんだ」などという嘆きはそもそも無意味で、「部下がやる気にならないのは上司の怠慢」というのがいまの認識です。

昨今の若手は、がんばるとか、成長とか、耐えるとか、努力とか、もはやそういう価値観・動機は過去のものになっていて、考え方はまったく違うんだという認識を持つ必要があります。

もちろん、全員がそうであるということではなく、当然ながら個人差はあるし、あくまで傾向としてです。その個人差も含めて上司が彼らを理解し、上司の方から部下に歩み寄ることが必要です。

そのように思考を転換できない上司は、「部下のことが理解できない」状態が続き、退職者を続出させてしまうことになりかねません。

それこそ3年で辞めるどころか、1年で辞めてしまいます。

ただしこれはやむを得ない側面もあって、40代後半以上の上司世代は気合と根性ベースで上司や先輩から教わってきただけで、それ以外の育てられ方を経験したことがない。

だから昨今のドライで効率的な価値観を持った若手部下たちの育て方がわからないし、彼らの価値観も理解できない。とはいえ、それでも彼らを育て戦力にしていかなければならないわけですから、彼らの価値観に寄り添っていく必要があります。

そこで、新入社員を含め20代前半の若手社員の傾向を、ちょっと極端に振ってご紹介します。

コロナ新卒の特徴は?

<特徴その1:言ったことしかやらない?>

たとえば「言ったことしかやらない」と嘆く上司は少なくありません。

しかしそれも当然で、学生時代は勉強の範囲や解法、果ては勉強の方法まで学校や塾などで教わってきたためです。

勉強の範囲は決まっていて、どこが試験に出るかも教えてくれる。あまり考えなくてもなんとかなったし、受験ではむしろ我流の方が危険でしょうから、自分で考えて動く習慣がないだけなのです。

今までずっと、自分から手を伸ばさなくても、大人のほうから手を差し伸べてきてくれていた。だから基本的には待ちの姿勢で、自分から何かを言い出すという経験が少ない。 

そのため、上司の背中を見て盗むとか、自分の方から積極的に教えを請いに行くという発想もなく、「教えてくれないなら、もういいや」と見限ってしまいます。

だから「わからないなら聞けばいいのに」という発想は捨て、こちらから歩み寄らなければなりません。

それに、「言ったことしかやらない」というのは言い方を変えれば、「少なくとも言ったことはやる」ということですからむしろ長所であると割り切り、丁寧に説明することです。

また、彼らは気の合う仲間としかつきあってこなかったため、たとえば起こりうる事象を想定して先手を打つとか、相手が言いたいことを想像して動くという姿勢が乏しい。そんな気配りをしなくてもやってこれたわけですから。

だから「そのぐらい言わなくてもわかるだろう」というのも通じません。「それくらい、いちいち言わなければならないのか!」とあきれたり憤っていてはストレスが溜まるだけです。

経験や習慣がないだけなので、面倒でも詳しく説明をすることです。

そうやって慣れきたときに、「この仕事はもう大丈夫だ。あとはもっと効率よくできないか自分なりに工夫してみたらいいよ」と段階的に任せていくことで、自分で考える習慣ができてきます。

<特徴その2:頑張れない、我慢できない?>

バブル世代はたとえば収入アップを、氷河期世代は雇用の安定を優先する傾向があったかもしれません。

しかし今の若い世代は、会社や仕事に対して冷めた見方をしています。プライベートを犠牲にして滅私奉公なんてとんでもないし、「つらかったら辞めればいい」「理不尽なことに耐えてまでその職場で頑張る必要はない」と思っています。

また、収入がそれほど上がらないことがわかっているし、欲しいものはたいてい持っているので、稼ぐことにそれほど貪欲ではありません。また、大変そうな上司を見ているので、昇格や昇進にもあまり興味はない。

そのため報酬や福利厚生といった待遇だけでは、今の彼らのモチベーションを維持することはできません。だから「頑張れ」などという叱咤激励も通じない。

一方で、根はまじめなので、納得感ややりがいを得れば一生懸命働きます。

「黙って言われたことをやれ」「目の前の仕事に集中していろ」「そのうちわかる」ではふてくされるだけなので、いちいち面倒くさくても、仕事ひとつひとうの意味や理由を伝え、腹に落ちるように説明しなければなりません。

そうやって仕事の意味、重要性を理解してもらう声掛けの努力が上司には必要なのです。

Next: 若い世代を理解するしかない。彼らの特徴と対応策は?



<特徴その3:努力しても報われない?>

「がんばっても仕方ない」と斜に構えたり、能力はあるのになぜか意欲が感じられない社員もいるでしょう。

昔と違い、学校は競争を回避する傾向がありますし、部活動をする人も減っていますから、昨今の若者は、努力して乗り越えた、がんばって報われたという成功体験が圧倒的に不足しています。
物心ついたときから不景気しか見ておらず、さらに周囲の大人たちが苦労しても報われない姿を見てきていますから、それが常識として刷り込まれているのです。

一方で、ネットでは結果だけが大きく喧伝されますが、プロセスが見えないから、その背景には泥臭い取り組みや地道な努力があるということがわからない。つまり、努力が報われた事例をほとんど知らない。

それに、彼らの言う「報われる」というのは、成功か失敗かという、100かゼロのような両極端に捉えているフシがあります。

努力したことが受験ぐらいしかないので、マルかバツか、合格か不合格か、という二元論でしか考えられないことが、そのような価値観を醸成していると考えられます。

しかし現実社会では、努力をして100%は報われないとしても、たとえば50%や70%は報われることはあります。

彼らの共通の話題で言えば、最初から二流大学を目指せば、三流大学にしか受からないこともあるが、たとえば東大を目指して勉強すれば、東大には受からなくても一橋大学や東工大には受かるかもしれない、といったところでしょうか。

1歩でも近づくということが報われるということであり、成長である。

しかし努力しても報われないからと最初からあきらめて何もしなければ、その1歩すら近づくことはない。それは人間としての性能がまったく変化しないということである。

しかし、前よりも少しうまくできる、前よりも少し速くできるということは、日々の努力の結果として成長したわけで、それは自分がレベルアップしたということ。

それが仕事の充実感であり、その繰り返しが満足度の高い職業人生になるのだと、説教くさくならないよう諭してあげる必要があります。

<特徴その4:すぐにブラックだ、パワハラだと騒ぐ?>

最近の若手社員の傾向として、ちょっと残業が続いただけで「ブラック企業だ」と騒いぐことがあります。軽い叱責でも「パワハラだ」と人事部へ駆け込むことがあります。

ブラック企業に対する報道、そしてバッシングが後を絶ちませんし、自分に不愉快なことは何でも「〇〇ハラスメント」と他人のせいにする社会風潮から、ちょっとしんどい扱いを受ければ、「ブラック企業だ、〇〇ハラだと言ってもいいいんだ」と思って自分を守ろうとします。

しかしこれもやむを得ないのです。

学校の先生はみな優しく、手取り足取り教えてくれたからです。でもそれは当然で、学校や教師にとって、学生は客だからです。

学生時代はお客様扱いで、守られた世界しか知らずに社会に出てきて、いきなり8時間とか10時間とか仕事を強いられるわけですから、心身ともに耐える力がないのです。

さらに、学校で自己責任を迫られる場面は少ないですから、義務を果たさず権利を主張することに抵抗もない。

アルバイトの経験すらなければ、仕事をするという責任、対価として給料をもらうという責任を理解することもありません。

叱られたときに「自分だってがんばっていますよ!」などと逆ギレするのもこういう人で、仕事の評価は自分でするものではなく周囲にされるものだということがわからない。

部活などもやっていなければ、努力して能力を高めるという経験が少ない。「上達には努力が必要」ということを実感していない(運動部出身の社員のほうがガッツがあるのは、そういう経験も役立っているのかもしれません)。

自分に負荷をかけなければ、精神的にもスキル的にも、仕事の実力はつかないということが理解できないので、努力を面倒くさがる傾向があります。

<特徴その5:自分はこんなことをするために入社したんじゃない?>

また、昨今の若者は子どもの頃から個性や自分らしさを求められ、大学に入ってもキャリアデザインとか好きなことを仕事に、などと聞かされて就職活動をしてきたため、自分のキャリアに貢献しそうな仕事や、やりたい仕事以外やりたがらない傾向があります。

彼らが言う「面白い仕事」というのは、どこか遊びやクラブ活動などで感じる面白さを期待しているようなところがあります。

しかし現実はそうではないから「こんなはずじゃなかった」「こんなことをするためにこの会社に入ったのではない」と落胆し辞めていく人は少なくありません

社会に出ると、上司は先生ではないし、会社は学校ではない。

そういったことを理解せず、会社に入れば上司や先輩がいろいろ教えてくれて、会社が自己実現させてくれるものだ、などという過剰な夢を持って就職してきているため、現実にぶつかって戸惑います。

中には、泥臭い地道な仕事をバカにするあまり、社外の勉強会や資格取得に逃げる人もいます。やる気はあるけれども、それが目の前の仕事に向かわないで青い鳥を探してしまう。

半面、上司世代は、そこをぐっと耐えて働いているうちに、いろいろなことができるようになり、いろいろ任せてもらえるようになり、仕事が面白くなってきたことを経験として体感している。
また、さまざまな人間関係にもまれ、自分が仕事の指示をするようになれば、会社の矛盾や理不尽を理解し受け止められるようになり、ごちゃごちゃいわずにがんばることの大切さも実感している。

しかし今の世代に「いずれわかる。いまは黙って仕事しろ」などと言っても、言われた方はむくれるだけ。そこで、それをうまく言語化して説明しなければなりません。

たとえば仕事でいう面白さとは、しんどいことを乗り越えて成し遂げる達成感、成長していく充足感であり、数日や数ヶ月程度でわかるようなものではない。だから性急に面白さを求めていては、ジョブホッパーまっしぐらの危険性をはらんでいる。

自分がやりたいことだけという偏った仕事だけをしていては、視野が狭くなって仕事の総合的な実力がつかず、将来、スキルニーズや環境変化によっては使い物にならなくなるリスクがある。
会社の内外で発生する多くの仕事(雑務を含む)を経験することが、自社のバリューチェーンやワークフローを含めた業務全体を把握・理解することにも役立つ。

それに今の自分が想像できる範囲以外の能力は、やってみないと開花しない……。

会社の方が意外に自分の適性を見抜いていて、やってみたらハマって才能が開くということもある。そんなことを、押しつけがましくなく、説教くさくもないよう、仕事の実力をつけるとはどういうことなのかを教えてあげる必要があります。

Next: 「育つ」とは何か? 上司や先輩が新人にできることは限られている



「質問コーチング」で部下が考える習慣作り

そもそも「育つ」とは何か。それは、上司があれこれ言わなくても、自分で考え自ら仕事を進められるようになることです。

ということは、「自分で考える」「自分から動く」という経験を積まなければ、そんな人にはならないというのは誰でもわかる話です。

なのに上司があれをやれ、これをやれと指示をしたり、それは違う、なんでちゃんとやらないんだと自分のやり方を押し付けたりすれば、自分で考えるようにはならない。

「なんで勝手に進めるんだ」「そうじゃないだろ」などと叱責すれば、自ら進んではやらなくなる。そして、「どうせ何を言っても無駄」となり、指示待ち人間の出来上がりです。

同じ理由で、熱心な指導も実は逆効果だったりします。なぜなら、懇切丁寧に教えたら、自分で考える必要がないから考える習慣がつかないからです。

もちろん新入社員やその業務の初心者であれば、最初は手取り足取り教えることは必要です。しかし、慣れてきてもあれこれ熱心に指導すると、逆にうっとうしがられるだけ。

それに、教えた側は教えたことを覚えていますが、教わった側は覚えていないことが多いものです。なぜなら、教えることは能動的な行為で、逆に教わることは受け身だから忘れやすいのです。
そのため、教えた方は覚えているから「ちゃんと教えたじゃないか!」「何度同じことを言わせるんだ!」などとイライラしてしまう。

そこで、質問コーチング形式で考えさせるという方法があります。

指示を与えるときは、たとえば「なんでこのようにするか、その理由がわかる?」「なぜそう思ったの?」と聞いてみましょう。もしそれで「わかりません」という答えが返ってきたら、「キミだったらどうする?」と意見を促す。

そして、その方法が間違えていたとしても否定するのではなく、「なるほど、それは面白い考えだ。でもこんな可能性はない?」あるいは、「こんな問題が起こったらどう対応する?」「ではそれを防ぐにどういう準備が必要かな?」と、事前に失敗する可能性についてシミュレーションしてもらう。

そしてもし失敗しても叱責するのではなく、「原因はなんだと思う?」と原因を考えさせる。その回答がピント外れだったら、「なんでそう思ったの?」と掘り下げる。

顧客に連れて行くときも、「顧客からこんな質問を受けたらどう答える?」「顧客からこんな反論が来たらどう答える?」と事前にロールプレイングする。

新しい仕事を与える時も、いきなり手順をアドバイスするより、「どうしたらいいんだろうね?アイデアない?」などと考えてもらいましょう。

もちろん、最初は正解にたどり着かないこともある。そこで、「こういう視点もあるんじゃない。ではそれらを組み合わせたらどういう方法がとれそう?」などと、部下が知らない情報を加味して質問する。

仕事の手順を教える時も、「あとで理解度を質問するからそのつもりでね」とか、「あとで質問を受け付けるから、最低2つは質問事項を考えておいてね」などと言っておけば、注意して聞いてくれるでしょう。

もし雑用やルーチンワークつまらなそうにしていたら、「この仕事を後輩に任せるとしたら、キミならどんなコツを伝授する?」と質問すれば、その仕事を振り返り、効率的にこなそうと意識するようになる。

そうやって質問を繰り返すことによって考えさせる、仮説を立てさせる、脳内シミュレーションをさせる。命令や叱責をしなくても、育てることは可能です。

任せる度量を持つ

上司の指示どおりに部下を動かせたほうが、たしかに成果は速く確実に出るかもしれませんが、それでは部下は自分で決断する経験ができず考えなくなるだけ。

部下の成長を考えると、時間はかかるけれども考えるように仕向けること。(致命的でない失敗でなければ)失敗しても受け止めると覚悟し任せること。最初から最後まで責任を持って完結する経験をさせるという度量が、上司には必要です。

自分の思い通りにならなくても、自分が望ましいと思う方法ではなくても、ある程度部下に任せることです。

そして仮にやり方が間違っていても、「そうじゃないだろ!」と否定するのではなく、たとえば笑顔で「あれ?そういうやり方だったかな~?」と含みを持たせて穏やかに伝えてみるとか。
部下が、「あれ、違ってましたっけ?」と聞いてきてもすぐには答えを教えず、「どうだろう~、どうだったかな~?」と考えさえる。

そして、「あ、思い出しました!こうですよね!」「正解!それでやっていこう」などと、上司が余裕のある態度で見守ってあげる。

そうやって上司が鷹揚にしていると、部下は委縮せず安心して取り組むことができます。

仮に失敗しても、叱責するのではなく、「なぜこうなったか、次からはどうすればいいか」を引き出し、わからないというなら一緒になって考えてあげることです。

些細なミスや失敗でも、ほとんどの場合、部下自身は反省しているものなので、そこにあえて塩を塗り込む必要はないでしょう。上司も人間ですから、「なんでいつも同じことを言わせるんだ」「なんでこんなこともできないんだ」とキレそうになることがあるのはもちろんですが、ここをじっくり我慢することで、部下は「戦力」に育っていきます。

また、この経験は部下自身にとっての学習効果も期待できます。

というのも、能動的な失敗体験がないままに仕事のコツや効率的な方法を教えてもらうと、その教えのありがたみがわかりません。そのためすぐに忘れ、同じ失敗を繰り返すことにつながりやすい。

しかし、自分のやり方で失敗した経験や、自分の段取りが悪くて手戻りが発生したこと、自分の効率が悪くて二度手間三度手間になってしまったような経験を経てコツをつかむと、納得感が強く、忘れにくくなります。
 
もちろん致命的な結果になりそうなことや、顧客や取引先に迷惑がかかるような失敗は、たとえば「こういうことになる可能性はない?」などと助言し、未然に防ぐのも上司の役目です。

また、いきなり大きな仕事を丸投げして失敗させると、逆に意気消沈して潰れてしまうこともありますから、あまり重要ではない案件のほうがよいでしょう。成功体験だけでなく、失敗体験も段階を踏む必要はあります。

むろん現場では、「そんな悠長な時間はない。即戦力化を急がされているんだ」という状況がほとんどだとは思います。それでも、なるべく部下自身に考えてもらい、失敗を経験してもらったほうが、結果的には早く育つものです。

上司にはそういう忍耐力、つまり部下が成長するのを辛抱強く待つ力が必要です。というか、組織の中で最も忍耐強いのが上司とも言えます。

Next: 優秀な新人をどう扱う?退職者を出さないために



退職者を出さないために

一方で、超絶に優秀な人材もいると思います。

彼らは上司の面倒見よりも、チャンスと自己成長の機会を求めます。そのため、成長につながる仕事が与えられていなければ、あるいは成長を押さえつけられてしまうと、「自分はここでは活躍できない」と辞めてしまいます。

だから優秀な部下や上昇意欲の強い部下には、できる限り新しい仕事や難易度の高い仕事を与え、そして任せることです。

職場の性質上、そういう機会がない場合は、人事部にかけあって他部門に異動させるのもひとつの方法です。

人手不足の昨今、優秀な人材の流出は会社にとって深刻なダメージであり、やむを得ない特別の事情がないのに退職者を出すことは、上司としての資質そのものも問われかねません。

これは優秀とかそうでないとかに関係ありませんが、不満のサインというのはどこかガンに似ています。健康な人でも日々ガン細胞は生まれているのですが、普通の人は免疫細胞がガン細胞を死滅させているから健康に生きられています。しかしその免疫細胞の働きが弱まると、ガン細胞の増殖スピードに追い付かず、ガンとして発症します。ガン細胞は部下の不満です。しかも今の若手は前述の通り「がまんして耐える」という発想が希薄で、「がまんするくらいならやめたほうがいい」と考えますから、急速に増殖して爆発します。それが「課長(部長)、お話があります」です。

だから部下が見せる小さな不満を放置してはいけない。上司は部下ひとり一人をしっかり観察し、そんな小さな変化を見逃さず、早期発見早期治療が必要です。

部下を辞めさせないためには、微に入り細に入り、「あなたはここにいていいんだ」「あなたはこの会社にとって必要な人材なんだ」と感じてもらい、居場所を確保してあげることです。

という感じで、あえてちょっと極端に振った説明にしてみましたが、余計なおせっかいでしたでしょうか?

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image by:metamorworks / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年5月11日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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